いま話題のこちらの本を読んでみたので以下レビューです。
レビューコメント
- データ分析で登場するキーワードの「地図」を提供してくれる良書。
- 機械学習モデルのみならず、時系列モデル、微分方程式モデル、統計解析モデルなど幅広いモデルを分類し横断的に説明するという、他に類を見ない書籍である。
- モデルの説明だけではなく、モデルを作る際の注意点、モデルの評価方法、パラメーター推定方法など、個別のモデルによらない内容が序盤と終盤に配置されている。
- モデルの内容を詳しく説明している書籍が非常に多い中、そもそものモデルの選び方、作り方、使い方が体系的に書かれている書籍は他にあまりないだろう。
- データ分析の全体像を把握することができ、後日に個別論点を学ぶ際に、他の本が読みやすくなるだろう。
説明されているキーワード
一部を挙げると以下の通り。
- 線形モデル、最小二乗法、べき乗則、最適化
- 微分方程式、固有値・定常解・安定性、非線形常微分方程式の線形化、偏微分方程式、制御理論とラプラス変換
- 確率過程、マルコフ過程、待ち行列とポアソン過程
- 正規分布、統計的検定、第一種過誤と第二種過誤、相関係数、重回帰分析
- 時系列モデルと定常性、AR, ARMA, ARIMA, SARIMA、状態空間モデル、カオス、因果性検定
- 機械学習(RF, SVM, NN, k-means, Mixture Model, PCA, ICAなど)
- 深層学習(CNN, RNN, AE, GANなど)
- 行動モデルとしての強化学習、機械学習としての強化学習、Q学習
- エージェントベースモデル
特徴
- 紙面がカラフルで図解が多く、大事な箇所にはあらかじめ黄色マーカーが引いてあり、視覚的に概要を押さえることができる。
- モデルの模式図やグラフがふんだんに使われており、モデルの「お気持ち」を手っ取り早く理解できる。
- 説明の文章も読みやすく、初学者に対する配慮が手厚い。
数式について
- 数式は最小限であり、数学が苦手な読者でも内容の核心は理解することができるだろう。
- カバーされている範囲は非常に広く、少し発展的な内容も脚注にけっこう書いてあるので、前提知識のある読者でも新たな発見が必ずあるだろう。
- 個人的にはもう少し数式を使ってくれてもよかったが、取り扱うトピックが幅広いため、紙面の都合上やむを得ないだろう。
注意点
- ソースコードは特になく、数式展開やアルゴリズムの詳細は書かれていないので、個別のモデルについて深堀りしたい読者は他の書籍が必要になる。
- 扱っている範囲が非常に広いため、個別のモデルについて数値例を用いた説明はあまりない。
- 何のために使うモデルなのか、他の手法と比較した特徴など、あくまで全体像を押さえることを目的に書かれている。
まとめ
- データ分析の初学者にとっては1冊目に読む本として最適。
- 機械学習を学習中の人にとっては、全体における各キーワードの位置付けがわかり、いま自分がどこを学んでいるのかがわかる。
- 機械学習について詳しい人にとっても、その他の統計モデルや時系列モデルなども横比較で学べる。モデルの選び方や使い方などもうまく言語化されている本なので、改めて頭の整理をすることができる。