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はじめに
今回は中級編として、
・クオンツを目指す理系学生
・クオンツに配属された社会人1年目の人
向けに、
・数式がモリモリ出てくるが、
・扱われているトピックは基本的な
金融工学の本を以下に列挙する。難易度に大きな違いはないが、独断と偏見で、だいたいの難易度が易しいものから難しいものの順で書いていく。
[1] シュリーブI
ファイナンスのための確率解析 I- シュリーブの非常に有名な教科書である2分冊の1冊目
- 特徴は、二項ツリーと具体的な数値例を用いて、基本的なトピックを簡潔に説明している点
- 扱っているトピックとしては、ラドン・ニコディム微分過程と測度変換、アメリカンオプション、鏡像原理、基本的な金利モデル、など
- これだけ幅広いトピックを二項ツリーでわかりやすく説明している本は他にあまりないだろう
- 具体的な数値例で、抽象的な内容もイメージが付きやすくなっている
[2] 村上本
金融実務講座 マルチンゲールアプローチ入門: デリバティブ価格理論の基礎とその実際- 下記 [3] シュリーブ2分冊の2冊目(ファイナンスのための確率解析II)から一部の内容を抜粋して、シュリーブよりも丁寧に解説した本
- 特徴は、これでもかというほど説明が丁寧であり、数式展開は脚注に詳しい説明が載っているので、数式アレルギーでもない限りこの本で挫折する人はまずいないだろう
- もう一つの特徴としては、ニューメレール変更とそれに伴う測度変換にスポットを当てて説明している点であり、つまづく人が多い測度変換をきちんと理解できる内容となっている
[3] シュリーブII
ファイナンスのための確率解析 II (連続時間モデル)- シュリーブの非常に有名な教科書である2分冊の2冊目
- 伊藤解析など、数学の準備に始まり、Black-Scholesモデル、アメリカンオプション、バリアオプション、金利モデル、ジャンププロセスなど、幅広いトピックをカバーしている
- 特徴は、式展開が非常に丁寧に書かれていて、行間を自力で埋める必要がないところであり、この本で挫折してしまうクオンツ志望者はほぼいないと思われる
- 確率解析を用いた数理ファイナンスを初めて学ぶ人に最適の一冊であり、これを読んだことがないクオンツはほぼいないだろう
- 2分冊の1冊目を読んでいなくても問題なく、2冊目だけで自己完結的に読める
[4] 藤田本
新版 ファイナンスの確率解析入門 (KS理工学専門書)- 内容も難易度も上記 [3] シュリーブ2分冊の2冊目(ファイナンスのための確率解析II)と同様
- シュリーブと比べた場合の特徴としては、例題や練習問題が多く、具体例を題材に自分で式展開の練習が十分にできる点
- 練習問題の解答も巻末にきちんと付いており、手を動かして、伊藤の公式などの計算練習を積むのによい
- 管理人が読んだのは旧版で、とにかく誤植が多い(特に練習問題の解答)ので有名だったが、現在は新版が出ているのでこちらではかなり誤植が直っている
[5] ネフツィ本
ファイナンスへの数学―金融デリバティブの基礎- 内容も難易度も上記 [3] シュリーブ2分冊の2冊目(ファイナンスのための確率解析II)と同様
- シュリーブと比べた場合の特徴としては、新しく出てくる定義や定理などが、なぜ必要なのか、それがあることで何がうれしいのか、というモチベーションの説明に注力している点である
- 式展開の説明はシュリーブの方がわかりやすいと思われるが、定理のモチベーションをこれだけ詳しく書いている本は他にないため、かなり貴重である
- 一般的な本とは少し異なった、オリジナリティのある説明の仕方をしているのが特徴
[6] 木島本
資産の価格付けと測度変換 (シリーズ・金融工学の新潮流)- 測度変換の観点で数理ファイナンスを解説した貴重な本
- 似たコンセプトの本としては [2] 村上本(マルチンゲールアプローチ入門)があるが、こちらは村上本と比べると、式展開が省略されているところもあり、難易度は若干上がるだろう
- 一方で、カバーされている内容の範囲は村上本よりも広く、二項ツリーを用いた離散時間での測度変換、金利モデル、クレジットモデル、などもカバーされている
- 上記に挙げたような、その他の本で数理ファイナンスの基礎を学んでから、測度変換の理解を深めるためにこの本を読むのが良いだろう。
- 特に、Black-Sholesモデル、Local Volatilityモデル、SABRモデルあたりまでは付いていけるが、金利の期間構造モデルになると急にわからなくなる、という人が多い。その原因のひとつはニューメレール変更と測度変換に慣れていないからなので、この本か [2] 村上本を一読することをおすすめする。
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