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参考文献
フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕 ―デリバティブ取引とリスク管理の総体系
はじめに
いまだに金融工学という用語は使われているようだが、ひとくちに金融工学といっても多くの分野に分かれている。数理的なアプローチでファイナンスを研究する分野という意味ではどれも共通しているのだが、分野によってやっていることが違う。そこで今回は、以下について簡単に紹介する。
- 金融工学の研究分野8つ
- それぞれがどの種類のクオンツに対応しているのか
- それぞれに必要な数学の分野
なお、本サイト管理人は学者・研究者ではないため、あくまで実務家目線での分野分けであることを念押ししておく。
金融工学の研究分野
おおまかに以下のように分かれると思う。
- ポートフォリオ理論 (Portfolio Management)
- デリバティブ評価 (Derivative Pricing)
- 金融経済学 (Financial Economics)
- 数理ファイナンス (Mathematical Finance)
- 計算ファイナンス (Computational Finance)
- リスク管理 (Risk Management)
- 計量ファイナンス (Financial Econometrics)
- アルゴリズムトレーディング (Algorithmic Trading)
最近ではこれら全てを横断する形で、機械学習が応用されている。
以下では各分野について簡単に見ていく。
1.ポートフォリオ理論
- 最適な資産配分を求める分野
- アセマネ業界などのバイサイドで広く応用されている
- アセマネのクオンツ(クオンツアナリスト、クオンツFM)はこの分野を深掘りすることになる
- ファイナンスや金融工学の古典的なテキストでも必ず取り上げられる有名な分野
- 使われる数学は主に線形代数、確率・統計、最適化のあたりで、最近は機械学習の応用をよくみかける
2.デリバティブ評価
- デリバティブ(金融派生商品)の価格を求める分野
- 証券会社などのセルサイドで広く応用されている
- セルサイドのデリバティブクオンツはこの分野を深堀りすることになる
- この分野もポートフォリオマネジメント並んで古典的なテーマであり、たいていの金融工学のテキストで取り上げられている
- 使われる数学は主に偏微分方程式、確率論・確率解析のあたり
3.金融経済学
- 市場均衡や効用最大化など、経済学のフレームワークを使ってファイナンスを数理的に分析する分野
- 4.数理ファイナンスとの境界がどこにあるのかよくわからないが、4.数理ファイナンスは市場均衡というよりは無裁定をベースに議論を進めることが多い
- かなり理論的な話が多く、実務で直接応用されるケースは多くないと思われるが、1.ポートフォリオマネジメントの分野とも関連がある
4.数理ファイナンス
- 1.ポートフォリオ理論や2.デリバティブ評価のテーマを数学的により厳密に議論する分野
- ポートフォリオ理論やデリバティブ評価の基礎を厳密に固めていく分野であり、実務で直接応用される分野という感じではない
- 使われる数学は解析の分野ほぼ全てという感じだが、主に、アドバンストな確率解析(Malliavin解析など)が多用されるのが特徴
5.計算ファイナンス
- 主に2.デリバティブ評価のテーマで必要な数値計算のアルゴリズムを深掘りする分野
- 証券会社などのセルサイドで積極的に応用されている
- セルサイドのデリバティブクオンツはこの分野を深堀りすることになる
- 使われる数学は、偏微分方程式、確率論・確率解析、数値解析のあたり
6.リスク管理
- 市場リスク、信用リスク、オペリスクなどの金融リスクを定量的に分析する分野
- 証券会社などのセルサイドで積極的に応用されている
- 銀行でもバーゼル規制資本の計算などで応用がみられる
- リスククオンツ/キャピタルクオンツはこの分野を深掘りすることになる
- 使われる数学は、線形代数、確率・統計、数理統計、時系列分析のあたり
- デリバティブプライシングなどでは統計学より確率論が重要だが、リスク管理の分野では逆に確率論よりも統計学が重要であり、アドバンストな統計学が応用されている印象
7.計量ファイナンス
- 幅広くファイナンスのテーマを統計的に研究する分野であり、実データを用いて、パラメーター推定、統計的検定、予測などを行う
- 実証分析が活発に行われており、バイサイド・セルサイドを問わず広く金融機関で応用されている
- 使われる数学は、確率論・確率解析、統計学、時系列分析のあたりで、計量経済学とも関連がある
8.アルゴリズムトレーディング
- 裁定取引や最適執行など、文字通りトレーディング戦略のアルゴリズムを研究する分野であり、特に高頻度トレードを念頭に置いていることが多い
- いわゆるMarket Microstructureなどの分野も含む
- 実データを用いた研究が活発に行われており、証券会社・銀行やヘッジファンドなどで応用されている
- アルゴトレードクオンツはこの分野を深掘りすることになる
- 比較的新しい分野であり、まだテキストもあまり多く出ていない印象
- 使われる数学は、確率論、統計学、時系列分析のあたりで、機械学習が積極的に応用されている
まとめ
以上のように、金融工学といっても多くの分野があり、それぞれのテーマ、応用されている業界、使われる数学は異なる。
分類の軸としては以下のようなものが考えられる。
- 理論(数学)寄り vs 実証(数値計算・アルゴリズム)寄り
- 確率論寄り vs 統計学寄り
- 現物がメイン vs デリバティブがメイン
- 長期データがメイン vs 短期データがメイン
以上の軸で8つの分野を比較すると次の通り。
- ポートフォリオ理論:
- 理論と実証の両方重要
- どちらかというと統計学寄り
- 現物がメイン
- 長期データがメイン
- デリバティブ評価:
- 理論と実証の両方重要
- 確率論寄り
- デリバティブが対象
- どちらかというと短期データ
- 金融経済学:
- 理論寄り
- 確率論寄り
- 現物もデリバも両方扱う?
- データはあまり使わない
- 数理ファイナンス:
- 理論寄り
- 確率論寄り
- デリバティブがメイン
- データはあまり使わない
- 計算ファイナンス:
- 実証寄り
- 確率論寄り
- デリバティブがメイン
- どちらかというと短期データ
- リスク管理:
- 理論と実証の両方重要
- 統計学寄り
- 現物もデリバも両方扱う?
- 長期データがメイン?
- 計量ファイナンス
- 実証寄り
- 統計学寄り
- 現物もデリバも両方扱う?
- 長期データも短期データも使う
- アルゴリズムトレーディング
- 実証寄り
- 統計学寄り
- 現物がメイン?
- 短期データがメイン
学生さんは以上を参考にして、自分が興味のある分野を選択されると良いと思う。
参考文献
フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕 ―デリバティブ取引とリスク管理の総体系
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