目次
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はじめに
今回は自分の実体験も踏まえて、クオンツの就職活動について書いてみる。新卒採用と中途採用で内容が異なってくるので、今回は新卒採用の就活にしぼって書いていく。
ただし注意点として、管理人が新卒就活をやったのはかなり前なので、情報が古い点、また、詳細については細かい誤りが含まれるかもしれない点については、ご容赦願いたい。採用プロセスについては、年度によって内容が異なってくるため、詳細は記載していない。
クオンツとは
クオンツとは、数理的な手法を用いて金融市場の分析、金融商品の評価、トレーディングや資産配分の計算ロジックを考案してシステムに実装する、という仕事を担う金融専門職である。
クオンツには大きく分けて4つの種類があり、それぞれ業務内容がかなり異なる。
(1)デリバティブクオンツ
(2)リスククオンツ/キャピタルクオンツ
(3)アルゴトレードクオンツ
(4)クオンツアナリスト/クオンツファンドマネージャー
就活生としては、
(1)や(2)になるには:証券会社、銀行、金融システムベンダーを受ける
(3)になるには:証券会社、銀行を受ける
(4)になるには:アセマネ、生保、信託銀行を受ける
ということになる。
各クオンツの仕事について、詳しくは以下の記事を参照のこと。
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個別企業の情報
野村證券
リサーチ部門には多種多様なクオンツ、マーケット部門にはデリバティブクオンツやアルゴトレードクオンツ、リスク部門にはデリバティブクオンツやリスククオンツがいる。過去に外資系証券を取り込んだ経緯もあり、海外拠点にも優秀なクオンツが多数いると思われる。取り扱っている分野も広いが各分野で人材の層が厚く、日系金融の中では技術力が頭ひとつ抜けている印象だ。新卒採用はリサーチ部門とマーケット部門のどちらかになる。
リサーチ部門の面接では、自分の研究内容についてホワイトボードに数式を書きながら説明・ディスカッションする。数学の問題をその場で解かされることもある。その他、
・研究でどのような数学をどのような用途で使っているか
・プログラミングはどの言語で、どれくらいの規模のプロジェクトでコードを書いたことがあるか
などが聞かれる。面接官は数学系や物理系、情報系の出身で、博士持ちも多い。
インターンシップでは具体的なテーマを設定しリサーチプロジェクトを完遂させることになるが、事前にデリバティブなどファイナンスの知識をインプットしておくとスムーズだろう。逆にファイナンスの知識なしでインターンシップに入るとかなり不利になると思われる。同様に、プログラミングについても、メジャーな言語で自由に使えるものを少なくとも1つは持っておかないと苦しい。数値計算のアルゴリズムについても、自分の専門分野であまり使っていない場合は事前に独学しておくことをおすすめする。
大和証券
マーケット部門とリスク部門にデリバティブクオンツ、リスククオンツ、アルゴトレードクオンツがいる。
研究センターのような独自のリサーチ部門は持っていないようだが、ロンドンなどの海外拠点で優秀な外人クオンツを採用しており、そこで調査開発、および開発したライブラリの検証などを行っているようだ。
東京でも調査開発の一部を担っているかもしれないが、メインは海外拠点だと思われる。東京のクオンツは、海外で開発・検証されたライブラリを、東京で導入する際に、追加で必要な数値検証、説明資料の作成などを行っているようだ。また、海外のライブラリをもとにして、東京で販売する商品に必要な部分を拡張したり、それに伴う数値挙動の確認なども行っていると思われる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
他の証券会社と同様、デリバティブクオンツ、リスククオンツ、アルゴトレードクオンツがいる。東京でモデル開発をやっているが、海外拠点とも連携しているので英語を使う機会も結構あるとのこと。なお、社名にモルガン・スタンレーと付いているがこれは資本関係があるから付いているのであって、必ずしもモルガン・スタンレーMUFG証券とクオンツ同士で連携をとっているわけではないらしい。
業務と並行して基礎研究も行っており、アカデミック寄りのクオンツを目指したい人には打って付けだろう。新人の理論研修も充実しているほか、コーディングも先輩とペアプログラミングでみっちり叩き込まれる。
この会社は特にシステム投資とアルゴリズムトレードにも力を入れている印象であり、クオンツエンジニア(クオンツが開発したモデルを本番環境に実装するQuant Developer)の開発環境もかなりモダンな環境を整えているようだ。
面接はかなりアカデミックであり、研究内容について根掘り葉掘り詳しく聞かれる。この会社のクオンツ社員3対学生1のアカデミック面接はハードなことで有名なのだが、管理人も経験したが本当にハードだった。面接官に数学専攻が多いのが特徴。ここのクオンツには赤の銀行から一時出向してきている人も混ざっているようだ。
SMBC日興証券
三菱証券と同様、様々なクオンツがいるが、他社と比べて中途採用組が多い印象。フロント、ミドルいずれも中途採用組には外銀出身やアカデミア出身を含む強いクオンツがいる。
一方で新卒採用でもクオンツコースが設けられており、セールス&トレーディング(フロント)とリスク管理(ミドル)のどちらかに行くようだ。
海外との連携はほぼやっていないと思われるが、逆に言うとモデル開発の上流から下流までを東京のクオンツが経験できる、ということでもある。
みずほ証券
昔はみずほFG内に証券コースがあり、そこに理系院卒が申し込んでクオンツ志望と伝えるとクオンツとして採用される、ということだったと思う。
しかし現在は、みずほ証券はみずほFGとは別で募集要項を出しており、その中にマーケットコースがあり、そこに申し込むことになる。クオンツコースとはなっていないので配属リスクがあるものの、理系院卒でかつクオンツ志望ということがきちんと伝わっていれば、フロントのクオンツチームに配属されるはず。しかし管理人は配属リスクがあるからということで、ここは受けていない。
この会社も積極的に中途採用でクオンツ人材を補充しており、外人クオンツも結構いるようだ。以前は論文を書いたり学会発表をしている人も何人かいたのだが、現在はどうなのだろうか。
特徴としては、FG内での人事異動が比較的活発な印象で、証券で採用されても異動で銀行のクオンツやトレーダーになることも珍しくない。
三菱UFJ銀行
ここは昔からクオンツコースを設けて毎年若干名を採用しているようだ。
全般的にクオンツ関連のテクノロジーは証券より銀行の方が遅れていることが多いのだが、この会社は銀行の中でもかなり先進的なことをやっており、新卒採用・中途採用を問わずクオンツ人材の層が厚い。他のメガと比べても人員に余裕があることで、緊急性の高い日常業務に忙殺されることが比較的少ないのか、基礎研究やセミナー主催、書籍出版なども行っているのが特徴。
特に新卒採用力が強く、かなりの優秀層を囲い込むことができている印象。証券部門と同様、新人の研修制度がかなり充実しており、理論とプログラミングの両方についてみっちり鍛えてもらえるのも魅力的、ということで学生人気が高いものと思われる。
面接では、クオンツ社員と1対1で研究内容について詳細に聞かれる。紙とペンが与えられ、数式を書きながら詳しく説明が求められる。入社後にゼロからきちんと教え込むからなのか、金融・ファイナンスの知識やプログラミング経験などはあまり聞かれず、学生の本分であるアカデミックな勉強・研究をきちんとやってきたか、そして相手の反応を見ながらわかりやすく説明できるか、が問われる。
三井住友銀行
ここは昔はクオンツコースでの新卒採用をやっていなかった気がするが、最近はやっているようだ。クオンツとして採用されても数か月から半年程度?、支店でのOJTがあるというのが特徴。扱いにくい専門家気質のような人材は求めておらず、あくまで銀行員であることが優先される、というスタンスが見え隠れする。これは青い銀行も比較的そうだと思われるが、クオンツ人材を新人のうちからクオンツとして育てる赤い銀行とそれ以外の銀行との違いが出ているといえるだろう。
青い銀行のように金融工学の専門子会社を持っているわけでもなく、赤い銀行のように手厚い新人教育で専門性の高い人材を育てている感じもあまりしないが、中途採用も含めて少数精鋭の人員で対応しているようだ。デリバティブのプライシングおよびその検証は、積極的に外部のシステムベンダーやコンサル会社を活用しているらしい。一方でかなり理論面に強いクオンツもきちんと採用しているようで、OBはアカデミアで教鞭をとっていたり、数理ファイナンスの論文を書いていたり、休職して博士課程で研究に打ち込んでいる人もいる(彼らには新卒採用組だけではなく中途採用組も当然含まれているので注意)。
赤い銀行や青い銀行と比べると、グループ内証券会社との連携はあまり行っていない印象である。
管理人の就活時にここはクオンツコースがなかったと記憶しており、配属リスクがあると思ったので受けていない。
みずほ銀行
ここは年度によってクオンツコースの枠が独立していたり、マーケットコースの中に吸収されていたりする。直近ではクオンツコースが独立しており、OJT終了後の配属がみずほ第一フィナンシャルテクノロジー社に限定されている。みずほ第一FT社は金融工学専門の子会社であり、デリバティブクオンツのほか、リスククオンツ、アセットマネジメントのクオンツも在籍しているようだ。というわけで、数か月?のOJT後、確実に何らかのクオンツ業務に携わることができるだろう。
みずほ第一FT社はMTECと並んで、昔から金融工学の専門会社として有名であり、学会発表や専門書執筆を行うクオンツも多く在籍している印象である。一方で、部署によってはコンサル色が強そうであり、顧客とのコミュニケーションやパワポによるプレゼンのスキルもかなり必要になるだろう。
入社当初にみずほ第一FT社へ配属されると、通常の銀行内の異動サイクルに比べれば、ある程度長い期間、クオンツ業務に携われるはずだが、銀行所属ということに変わりはないので、将来的には銀行本体のマーケット部門やリスク管理部門に異動になるものと思われる。
第一生命
生保でアクチュアリーコースとは別にクオンツコースを設けているのはここだけではないだろうか。その理由としてはみずほ第一FT社の存在が大きいだろう。とはいっても、ここのクオンツコースで採用されてもみずほ第一FT社に配属されるのはごく一部らしく、運用のフロントポジションに行く人が多いようだ。ファンドマネージャー、クオンツアナリスト、その他、ファンダメンタルズを見るアナリストなど、進路は多くの職種に分かれると思われる。
選考は筆記試験から始まるのが特徴。この筆記は、年度によって違ってくるだろうが、おそらくみずほ第一FT社が出題しているということもあり、金融工学関連の質問が多い。デリバティブ評価、生存時間解析、ポートフォリオ最適化などであり、事前に金融工学の教科書で予習しておく必要がある。
面接は初めのほうはみずほ第一FT社の人が出てくるが、他社に比べると研究内容についてあまり深く掘り下げてこない印象。評価が高ければかなり少ない面接回数で内定が出るようだ。