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CEVモデルとは
CEVモデルはBlack-Scholesモデル(対数正規モデル)とBachelierモデル(正規モデル)の中間を表すモデルである。
\(dS_t = \sigma S_t^\beta dW_t \)
\(\beta = 1\)のときにBlack-Scholesモデル、\(\beta = 0\)のときにBachelierモデルとなる。これらのモデルはCEVモデルの特殊な場合であるといえる。
また、パラメトリックなローカルボラティリティモデルの一種と見ることもできる。ローカルボラティリティモデルとは、ボラティリティが原資産価格の確定的な関数となるモデルである。
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CEVモデルを使う際には\(\beta\)を0と1の間の値にすることで、対数正規分布と正規分布の中間の分布を表現する。これによりボラティリティスマイルのスキュー構造(ATMより低ストライクの方が高ストライクよりスマイルの傾きが急であること)がある程度再現される。\(\beta\)の値が1に近いほど対数正規分布に近くなるので縦軸をBlackボラティリティにした場合のボラティリティスマイルがフラットに近くなる。\(\beta\)の値が0に近いほどNormalボラティリティのスマイルがフラットに近くなる。
しかし右下がりのスキューがきつすぎる場合(つまり低ストライクの右下がりの傾きが急すぎる場合)には、CEVモデルで表現しようとすると \(\beta\)がマイナスにならないといけないことがある。しかし \(\beta\) にはゼロという明確な下限があるので、これはすなわちCEVモデルでは表現できないスキュー構造、ということになる。高金利通貨と低金利通貨(日本円など)の間の為替レートなどは右下がりのスキューがきつい傾向にあるため、このようなボラティリティスマイルはCEVモデルで表現しにくいだろう。
対数正規分布と正規分布の中間を表現する方法としてはCEVモデル以外にもShifted Lognormalモデル(Displaced Diffusuionモデルとも言う)がある。Shifted Lognormalモデルはシフト幅が大きいほど正規分布に近くなる。実はCEVモデルをATM付近で一次近似するとShifted Lognormalモデルになる、という関係がある。
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CEVモデルの大きな特徴は原資産価格が常にプラスであることを要求する点である。この点が他のモデルとの大きな違いであり重要である。原資産価格の\(\beta\)乗を計算できないといけないので、マイナスの原資産価格をインプットするとエラーとなる。例えば \(\beta = 0.5\) とすれば平方根を計算することになるが、マイナスの原資産価格の平方根は虚数値になってしまい実数値とならないのでそれ以上計算を進めることができない。このため、原資産価格がプラスであることを要求するために境界条件を課すことになる。境界条件としては、いったん原資産価格がゼロ以下に行ったらそれ以降はずっとゼロにする、などがある。
このような境界条件を課さないといけないことによって、仮に\(\beta\)がゼロに近くても、Bachelierモデル(Normalモデル、正規分布モデル)とはかなり異なる分布になることがある。実際、長い満期において、原資産価格の累積確率分布はゼロに近い低ストライクにおいて、正規分布モデルの場合より高い確率を示す(ゼロ付近のプラス領域に到達する確率は正規分布モデルよりも高くなる)。もしスポットの原資産価格がゼロに近いくらい低ければより一層この現象は顕著になる。
正規分布モデルの場合はマイナスの原資産価格を許容しているので、マイナス領域に到達する確率が存在する。このため累積確率分布のグラフはゼロ付近でもなめらかである。しかしCEVモデルの場合はマイナス領域に到達する確率はゼロなので(ゼロになるよう条件を課しているので)、マイナス領域に入ったとたんにガタっと垂直に下がってゼロに張り付く。
このように扱いづらい部分があるにも関わらず教科書などでたまに出てくるのはなぜかというと、CEVモデルには非心カイ二乗分布の累積分布関数を用いた、バニラオプションの準解析解があるからである。
現代においては実務でCEVモデルを単体で使うことはないが、CEVモデルに確率ボラティリティを付け加えたのがSABRモデルである。SABRモデルでは金利部分がCEVモデルで、確率ボラティリティが対数正規型のダイナミクスに従う。
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CEVモデルのメリットとしては、マイナスに行かないものをモデル化するのに都合が良い、という点も重要である。例えばボラティリティやハザードレートなどはマイナスに行ってはいけないので、CEVモデルの適用対象の候補となり得る。
金利に加えてボラティリティにもCEVモデルを使ったモデルがZABRモデルである。これはSABRモデルを拡張した形になっている。
CEVモデルで\(\beta=0.5\)として、ドリフトに平均回帰性を加えたものがCIRモデルであり、ハザードレート(条件付デフォルト確率)にCIRモデルを用いることはよくある。
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