CIRモデルとJCIRモデル

ざっくり解説

クレジットでよく使われるCIRモデルだが、これにジャンプを加えたJCIRモデルもよく使われる。

ジャンプを加える理由は、CIRではCDSオプションのマーケットボラティリティにうまくフィッティングしないからだ。
 
CDSオプションはUSDなどごく一部の通貨で、かつ、1年未満の短期ゾーンしか取れない。したがって、JPYの場合にはその代わりとして、ヒストリカルのCDSスプレッドから推定したボラティリティを用いることになるだろう。
 
CIRではモデリング対象のハザードレートがマイナスにならないように、フェラー条件を課すと、Sigmaパラメーターに上限ができる。これによって、高いマーケットボラティリティに、モデルボラティリティが届かなくなってしまう。
この問題を改善させるために、ジャンプ項を加えることで、満期が短いゾーンにおける高いマーケットボラティリティにフィッティングさせよう、というのがモチベーションだ。
 
フェラー条件を課すとマーケットボラティリティにフィッティングしない、ということはつまり、マーケットのCDSスプレッドを所与とすると、マーケットのCDSオプション価格にインプライされている分布は、ジャンプなしのCIRモデルのものとは異なる、ということになる。市場価格と整合的に評価するためには、CIRモデルでは不十分ということになる。
 
フェラー条件を課すとマーケットボラティリティに届かない。だからといってフェラー条件を外すと、デフォルト確率がマイナスになり、シンプルなガウシアンモデルではなくわざわざCIRモデルを持ち出してきた意味がない。このジレンマを解消するために導入されたのがJCIRモデルというわけだ。
 
スマイルの補間モデルにおいて、ジャンプを加える理由は、短期ゾーンにおけるとんがったスマイルにフィッテングさせるためである。確率ボラティリティだけでは満期が長くならないとスマイル形状に与える影響が大きくならないが、ジャンプを加えると、短期ゾーンでもすぐに影響が出てくる。
 
クレジットで用いるJCIRモデルは、スマイルの補間モデルではなく、プライシングモデルとして使用するものだが、ジャンプ項を使うモチベーションは結構似ている。

参考文献

Modern Derivatives Pricing and Credit Exposure Analysis: Theory and Practice of CSA and XVA Pricing, Exposure Simulation and Backtesting (Applied Quantitative Finance) (English Edition)

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