金利スマイルの補間モデルでデファクトスタンダードになっているSABRモデルだが、これはHagan近似のおかげである。
Hagan近似とは、SABRモデルにおけるバニラオプション価格をBlackモデルの価格で近似したものであり、SABRモデルの価格を再現するようなBlackボラティリティの近似式のことである。
Blackボラティリティの方が有名ではあるが、Hagan近似はNormalボラティリティのバージョンもあり、同じSABR論文の中で導出されている。これはつまり、SABRモデルの価格を再現するようなNormalボラティリティである。
これらHagan近似のおかげで、モデル価格を経由せずに直接モデルボラティリティが計算できる。
Hestonなど通常のスマイルモデルでは、
・モデルパラメーターからいったんモデル価格を出す
・その後、モデル価格からインプライドボラティリティを数値的に逆算する
という2段階の計算になり、手間がかかる。
しかしHagan近似では、モデルパラメーターから直接モデルボラティリティを出すことができる。
さらに、BlackボラティリティもNormalボラティリティも、どちらの式も特殊関数や数値積分が登場しておらず、初等的な関数のみで構成されているため、実装が容易である。
Hagan近似でやっていることはつまり、確率ボラティリティモデルであるSABRモデルを、ボラティリティが定数のBlackモデルやBachelierモデルに変換しているわけである。
このように、結果のオプション価格が変わらないようにしつつ、複雑なモデルをより簡単なモデルにマッピングする、という考え方は他にもいろんなモデルに適用されている常套手段である。
しかし実際にマッピング結果の導出に用いられる数学的な道具は、モデルや論文によってさまざまに異なっている。
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