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金融におけるSABRモデルとは
SABR(セイバー)モデルは確率ボラティリティモデルの1つであり、原資産価格に加えて、原資産価格のボラティリティも確率的に変動すると仮定している。
SABRでは以下のようにモデリングする。
- 原資産価格(金利の場合はフォワードレート)にはCEV型のダイナミクスを用いる
- 原資産価格のボラティリティには対数正規型(ブラックショールズ型)のダイナミクスを用いる
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SABR modelの使い道とは
SABRモデルの主な使い道は、マーケットでクォートされているボラティリティを、ストライクレート(行使レート)方向に補間するときである。
ここで、マーケットボラティリティをストライク方向に補間するというのは、市場から取得できない行使レートを持つバニラオプション(シンプルなコールまたはプットのオプション)の、プライシングモデルとして使うのと同じことである。
逆に、バニラ以外のオプション(エキゾチックオプション)のプライシングにはあまり使わない。
金利オプションではSABRモデルがデファクトスタンダードになっており、株式オプションでもたまに使われている。
セイバーモデルのパラメーター:4つある
SABRモデルのパラメータは、以下の4つである。
- \(\alpha\)(アルファ)
- \(\beta\)(ベータ)
- \(\nu\)(ニュー)
- \(\rho\)(ロー)
1.\(\alpha\)(アルファ)はスマイル全体の水準を表す
- モデル上の意味としては、確率ボラティリティの初期値
- ゼロ以上の正の値をとる
- ボラティリティスマイルの全体的な水準をコントロールする
- 日次で観測できるATMボラティリティに合うようにキャリブレーションする
2.\(\beta\)(ベータ)はスマイルのダイナミクス、スマイルの傾きを表す
- モデル上の意味としては、原資産価格のダイナミクスが対数正規型と正規型でどちらに近いかを表す(1.0に近いほど対数正規型に近い)
- 0と1の間の値をとる
- ボラティリティスマイルの傾きをコントロールする
- 原資産が動いたときにATMボラティリティがどう動くか、というボラティリティスマイルのダイナミクスに関係している
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3.\(\nu\)(ニュー)はスマイルの曲率(とがり具合)を表す
- モデル上の意味としては、確率ボラティリティのボラティリティを表す(ボルボル: VolVolと言う)
- ゼロ以上の値をとる
- 満期が短いほど非常に高い値をとる
- ボラティリティスマイルの曲率、つまり、とがり具合をコントロールする
4.\(\rho\)(ロー)はスマイルの傾きを表す
- モデル上の意味としては、原資産価格と確率ボラティリティの相関を表す
- 相関なので-1と1の間の値をとる
- -1に近づくほど、スマイル全体が時計回りに回転し、右下がりのスキューが強くなる
- 特に株価スマイルでは、原資産価格が下がるとボラティリティが上がるという逆相関が見られ、満期が短いほど\(\rho\)は-1に近い値をとる
- ボラティリティスマイルの傾きをコントロールする
セイバーモデルのキャリブレーション方法
一般的なキャリブレーション(パラメータ設定)の手順は以下の通り。
- まず\(\beta\)を適当な値に固定する(トレーダーの感覚で設定することが多い)。\(\beta\)が市場環境に合っているかどうかは定期的に検証するが、普段は変更しない。
- 次に\(\nu\)と\(\rho\)を、月次で取得できるボラティリティスマイルにフィットさせる(つまり月に一回、パラメーター値を変更する)。
- 最後に\(\alpha\)を日次で取得できるATMボラティリティにフィットさせる。\(\nu\)と\(\rho\)は日次では変わらないので、スマイルの形状はそのままに、\(\alpha\)の値が変わることでスマイル全体の水準が上下にシフトする。
金利オプションの場合、
- \(\beta\)はスワップションのオプション満期とスワップ期間によらず同じ値をフラットに設定する
- \(\alpha , \rho , \nu \)はスワップションのオプション満期とスワップ期間ごとに異なる値を設定する。このため、これら3つのパラメーターはマトリックスの形で保持する。
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