TermSOFR使用の制限は永久に続く
FEDによると、ターム物SOFRの使用制限が緩和されることはなさそうだ。
Strict term SOFR trading rules ‘permanent’ says Fed’s Bowman – Risk.net
現状、デリバティブにおけるターム物SOFRの利用は、エンドユーザーが発行したターム物SOFR参照のキャッシュ商品(債券など)のヘッジ目的で、エンドユーザーと金融機関が行う取引に限定されている。
「ヘッジ目的」というのは、あくまでエンドユーザー(=金融機関の顧客)にとってのヘッジであり、金融機関にとってのヘッジではない。金融機関から見ると、顧客と行ったターム物SOFRスワップをインターバンクでヘッジできない状態となっている。
後決め複利SOFRを参照するスワップ(通常のOIS)は取引できるので、それを用いるしかないが、後決め複利SOFRとターム物SOFRは同一の金利ではないので、そこにはベーシスリスクが残る。
後決め複利SOFRで参照される日次のSOFRレートは米国債のレポマーケットに応じて決まる。一方、ターム物SOFRレートはSOFR先物マーケットに応じて決まる。それぞれ異なるマーケットで決まるレートであり、ターム物SOFRを後決め複利SOFRで完全にヘッジすることはできない。
ターム物SOFRスワップのマーケットは、金融機関がエンドユーザーと行う取引のみによって形成され、偏ったマーケットになっている。それに伴うコストは、ターム物SOFRスワップを取引したいエンドユーザーに課されることになる。
インターバンクマーケットが存在しないことから、一部の金融機関ではターム物SOFRデリバティブを米国会計基準におけるレベル3に分類しているようだ。レベル3という分類は、マーケットで観測できないインプットをプライシングに使用している商品である。インターバンクマーケットが存在しないため、ターム物SOFRレートはマーケットで観測できるとは言い難い、と判断したものと思われる。
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