【わかりやすく】バリューアットリスク(VaR)の計算方法・計算式の分類【分散共分散法・ヒストリカル法・モンテカルロ法・フルバリュエーション法】

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バリューアットリスク(VaR)の計算方法の分類

バリューアットリスクの計算方法は以下の2つの軸で分類できる

  • 市場変数の確率分布パラメトリックな分布を用いるか、ヒストリカルの経験分布を用いるか
  • 時価変化センシティビティ(感応度)で近似的に求めるか、まじめに時価を再計算(フルバリュエーション、フルリバリュエーション)して求めるか

よって 2 x 2 = 4 通りの方法がある。

パラメトリックな分布を用いる方法

市場変数をパラメトリックにモデル化する方法。パラメトリックというのは、市場変数の変動に特定の関数形を仮定するという意味である。関数形には、推定しないといけないパラメーターが含まれるため、パラメトリックと呼ばれている。

分布としては、正規分布のほか、対数正規分布など正規分布をベースにしたシンプルな分布を用いることが多い。例外的に、モンテカルロ法では複雑な分布を持つモデルを使うことができる

パラメトリック法では当然のことだが、次のような弱点がある。

  • パラメーターの具体的な値を推定する必要があり手間がかかる
  • その推定方法によって結果が変わってきてしまう

ヒストリカルの経験分布を用いる方法

市場変数の分布を数式で表現することをあきらめて、実データで過去に実現した分布(過去に経験済みという意味で経験分布と言う)を用いる方法。正規分布では表現できないファットテールを考慮することができる

しかし分布として当てはめる過去データの期間の取り方によって全然違う結果になってしまう
また、直近のデータほど大きな重みを与えることが多いが、この重み付け(ウェイト付け)のやり方によっても数値が違ってくる

時価変化を感応度で求める方法

金融商品の時価が市場変数の関数であると考えて、時価関数を様々な市場変数についてテーラー展開することで時価関数の変化を近似する。テーラー展開はたいてい2次の項までを用いる(2次近似)。

テーラー展開では時価関数の市場変数に対する偏微分(感応度)が出てくるので、感応度法やセンシティビティ法とも呼ばれる。この感応度はオプションの分野ではまさしくグリークス(Greeks)と呼ばれるもので、プライスを原資産で偏微分したものはデルタ、ボラティリティで偏微分したものはベガ、原資産で二階偏微分したものはガンマ・・・と呼ばれる。2次近似する場合はデルタ・ガンマ法とも呼ばれる。

2次までの感応度で時価変化を求めるのはあくまで近似的な解法であるため、3次以上の複雑な感応度を持つ商品(エキゾチックオプションなど)を持っている場合は、2次までの感応度で近似的に求めた時価変化と、実際の時価変化に大きな誤差が出てきてしまう。

時価変化をまじめに再計算する方法

フルバリュエーション法やフルリバリュエーション法と呼ばれる。

これはテーラー展開で近似するのではなく、実際に市場変数を変化した後に時価を再計算し、求まった時価と元の時価の差分で変化を求める方法である。

この場合は近似が入っていないので、複雑な金融商品のリスク特性を織り込むことができ、より厳密な方法である。
しかし一方で、計算がかなり煩雑になりシステム負荷が大きい・時間がかかるなどの問題がある。

4通りの方法

まとめると2×2の組み合わせで全部で4通りの方法がある。

  1. 分散共分散法(デルタガンマ法)
    市場変数にパラメトリックな分布を仮定し、時価変化はセンシティビティを用いて近似的に求める方法
  2. モンテカルロ法
    市場変数にパラメトリックな分布(ある程度複雑な分布も採用可能)を仮定し、時価変化はまじめに再計算で求める方法
  3. ヒストリカル・センシティビティ法
    市場変数にヒストリカルの経験分布を仮定し、時価変化はセンシティビティを用いて近似的に求める方法
  4. ヒストリカル・フルバリュエーション法
    市場変数にヒストリカルの経験分布を仮定し、時価変化はまじめに再計算で求める方法

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