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回収率リスクとは
回収率リスク(リカバリーレートリスク)とは、CDSなどのクレジット商品の評価において、インプットとなる回収率の指定を間違うリスクである。
回収率とは、デフォルト時に元本のうちいくらを回収できるか、を表している。
ところがそのような情報は、
・たいてい市場で観測できない
・ヒストリカルデータから推定しようにもデフォルト発生数が少なすぎる
という問題がある。
このため、市場では簡単化する仮定として、回収率には何らかの固定値を設定する、というのが一般的である。
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もっとも、本当に潰れそうな会社が出てきて、
市場がデフォルトリスクを本格的に意識し始めると、状況は変わる。
回収率を固定化するリカバリーロックやリカバリースワップと呼ばれる商品が出てきて、市場参加者がそれぞれ異なる回収率の予想値を持って取引し始める。
リカバリーロック(リカバリースワップ)取引とは【CDS/回収率/クレジット】 | Quant College
このため、通常時はリカバリーレートリスクが顕在化することはないものの、
デフォルトリスクが高まってきて、CDSスプレッドがかなりワイドニングしてくると、リカバリーレートリスクに注意が必要となる。
リカバリーレートリスクから来る損失としては例えば、
- CDSのプロテクション買いであれば、回収率が上昇すると、支払うプレミアムが多過ぎる(デフォルト損失が低下したのに、支払うデフォルト保険料は高いレートで固定されている)ということで、損失が出る。
- CDSのプロテクション売りであれば、回収率が低下すると、受け取るプレミアムが少な過ぎる(デフォルト損失が上昇したのに、受け取るデフォルト保険料は低いレートで固定されている)ということで、損失が出る。
2種類の回収率リスク
リカバリーレートリスクには以下の2種類がある。
- クレジットスプレッドを一定としたときに、回収率が変動するリスク
- 生存確率を一定、つまりデフォルト確率を一定としたときに、回収率が変動するリスク
ここで、実際のデフォルト発生時に実現した回収率が当初の仮定と異なる、というリスクは、⑵の特殊な場合として分類できる。
なぜなら、生存確率がゼロ%としたときに回収率が変動するリスク、と考えられるからである。
(1)クレジットスプレッドが一定の場合
⑴の場合は、クレジットスプレッドを一定に保つので、クレジット・トライアングル:
クレジットスプレッド
=デフォルト確率×デフォルト時損失率
=デフォルト確率×(1-回収率)
から、回収率が上がると、デフォルト時損失率(LGD)は下がり、その低下を相殺するようにデフォルト確率(PD)は上がることになる。
つまり、デフォルトによる期待損失(デフォルト確率×デフォルト時損失率)は、以下の相殺効果により、あまり大きくは変化しない。
・回収率が上がるということは、デフォルト時損失率が下がる
・逆に、デフォルト確率は上がる
そもそも、クレジットスプレッドは期待損失を表しているから、それが一定ということは、クレジット商品のPVはあまり変化しない。
(2)デフォルト確率が一定の場合
⑵の場合は、生存確率が一定、つまりデフォルト確率が一定で、回収率だけが変化するので、クレジット・トライアングル:
クレジットスプレッド
=デフォルト確率×デフォルト時損失率
=デフォルト確率×(1-回収率)
から、クレジットスプレッドは変化することになる。
このとき、回収率が上がると、デフォルト時損失率は下がるので、
デフォルト確率が一定だと、クレジットスプレッドは下がることになる。
これによって、⑵は⑴の場合に比べて、クレジット商品の時価は大きく変化する。
(1)と(2)の比較
⑴より⑵の方が、リカバリーレートリスクとしては精緻な計算方法である。
なぜなら、市場参加者の期待回収率が変化するようなマーケット環境では、それに合わせて市場のクレジットスプレッドも変化するはずだからである。
しかしながら、CDSなどのマーケットメイカーが⑵の方法のように、精緻なプライスを必ず出してくるとは限らない。
マーケットのCDSスプレッドは容易に取得できるので、そのスプレッドが間違っていなければ、⑴の方法によると、インプットする回収率が間違っていても、(クレジットスプレッドは一定なので、)時価への影響は小さいだろう。
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