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信用VaRと損失分布
信用VaR(バリューアットリスク)の計算方法は、市場VaRと同様に、将来時点における損失分布を求め、想定される最悪損失として、左端のパーセンタイル点(99.9%点など)をとることで求める。
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問題はこの損失分布をどう求めるか、という点である。
現実的な仮定をあれこれと取り入れようとすると、解析的に分布を求めるのが困難になり、結果としてモンテカルロシミュレーションなど計算負荷の重い方法をとることになってしまう。
しかし解析的に求める方法(解析近似解)の中には、現実的な仮定をある程度考慮に入れることができる方法もある。その一つが極限損失分布とグラニュラリティ調整を組み合わせる方法である。これは、非常に単純化した場合のざっくり計算に対して、精度を高めるための調整を加える方法である。
極限損失分布とは
まず、損失額の変動を共通要因(システマティックファクター)と個別要因(イディオシンクラティックリスク)に分解する、という考え方を理解する必要がある。
共通要因とは、個別の債務者と関係ない、経済情勢などのマクロ要因をイメージすればよい。景気が悪くなればどの業界のどの会社も信用リスクが高まり得る、という発想である。
次に個別要因とは、個別の債務者に特有のリスク要因のことであり、債務者の数だけ存在する。
ここで現代ポートフォリオ理論の分散投資と同様の考え方を適用する。すなわち、十分に債務者が分散されたポートフォリオの場合、個別要因は互いに相殺されてほぼ無視でき、共通要因だけが残る、と考える。
極限損失分布とは、無限に細分化・分散化された債務者ポートフォリオにおける損失分布のことである。イメージとしては、あらゆる地域・業種・規模の企業・個人に極めてまんべんなくお金を貸しているような状況である。このような理想状態においては、個別要因は無視しても影響が小さいため、実際の損失分布を極限損失分布で近似しよう、ということである。
グラニュラリティ調整とは
しかし実際には債務者がそれほど多くなかったり、あるいは特定の種類の債務者に偏るのが普通であり、無限に分散されたポートフォリオのような状況は存在しない。このため、現実の損失分布を極限損失分布で直接近似するのは少しおおざっぱ過ぎるでしょう、ということで、近似精度を向上させるために、極限損失分布に対して調整を加えることを考える。
十分に分散化されたポートフォリオに抜けているのは各債務者に固有の個別要因であり、これをある程度考慮に入れるのがグラニュラリティ調整である。グラニュラリティは「粗さ」や「粒度」というような意味であり、これは極限損失分布だと債務者の分布が無限に「細かく」分散されているが、実際にはもっと「粗く」分散されているはずだ、という仮定を考慮に入れる方法だ。
グラニュラリティ調整では、実際の損失分布のパーセンタイル点を極限損失分布のパーセンタイル点のまわりでテーラー展開し、二次までで近似する。イメージとしては、たくさんある個別要因のうち、損失分布のパーセンタイル点に与える影響が大きい要因のみを考慮に入れる、ということである。
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