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CoCo債(偶発転換社債)とは

Contingent Convertible Bonds、略してCoCo BondsやCoCosと呼ばれる。日本語では偶発的転換社債などと訳されるが、CoCo債と呼ばれる。

CoCo債とは、発行体の自己資本比率が一定水準より下がると、元本が減ったり、株式に強制転換されてしまう債券である。「自己資本比率が一定水準より下がる」という条件を満たすと、それをきっかけ(トリガー)として元本削減や株式転換となる、という意味で、この条件をトリガー条項と言う。

自己資本比率が下がる状況では、基本的に発行体の株価は下落しているだろうから、株価が下落すると元本が削減されたり株式に転換されたりする、というイメージになる。CoCo債は形式としては債券になっているが、株式に近い特徴を持っていることがわかる。

CoCo債は、投資家にとって不利なトリガー条項が付いていることによって、その分だけ通常の債券より高い利回りが得られる

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CoCo債の簡単な説明とプライシング方法の概要は、過去に以下の記事で書いているのでそちらも合わせて確認してほしい。

CoCo債の読み方

日本語だと「ココさい」である。

CoCo債には3種類ある

今回の記事では、CoCo債の分類について簡単に説明する。分類の仕方はいくつもあるだろうが、そのひとつは、以下の3つに分類する方法である。

  1. Write-Downタイプ
  2. Conversionタイプ
  3. CoCoCo債(Contingent Conversion Convertible Bonds)

(1)と(2)はトリガーが引かれたときに何が起こるのか、が異なる。ここでトリガーは、典型的には、発行体の自己資本比率が一定水準を下回ったら引かれることになる。

(1)Write-Downタイプ

(1)は、トリガーが引かれると投資家に支払われるキャッシュフローが減額される。何がどれくらい減額されるかは債券ごとに異なるが、典型的には、債券の元本が一定割合だけ減額されてしまう

また、一部のCoCo債では、temporary write-downというのがある。これは、いったんトリガーが引かれて元本が減額されても、その後に自己資本比率などが一定程度改善した場合、元本が増額される、というものだ。

(2)Conversionタイプ

(2)は、トリガーが引かれると、CoCo債はあらかじめ決められた株数の株式に転換され、投資家に交付される。

CoCo債のトリガーが引かれるのは発行体の株価が下落したときであるから、この場合も(1)と同様に、トリガーによって投資家は損失を被る
(2)の場合はさらに、CoCo債の投資家だけではなく、既存株主も不利益を被る株式への転換によって株数が増え一株当たり利益が低下(希薄化)するからである。

転換される株数は転換比率といわれるが、これは元本を転換価格で割って求める。

転換株数=転換比率=債券の元本÷転換価格

よって、転換される株数を求めるには、転換価格を決めないといけない。この転換価格の決め方には複数の方法がある
CoCo債(偶発転換社債)とは:転換価格の決め方は2種類ある | Quant College

(3)CoCoCo債

(3)はレアケースだが、過去にキプロス銀行の発行実績があるようだ。CoCoCo債というのは、通常のCoCo債と通常の転換社債(CB)を合体させたようなものである。
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  • 株価が下がってトリガーが引かれると、通常のCoCo債と同様に強制転換が起こり、投資家は損失を被る
  • 一方で、株価が上がると、通常のCBと同様に、投資家は転換権を行使して、値上がり益を享受できる

すなわち投資家にとっては、転換の義務(強制転換)と権利(転換権)が両方与えられていることになる。

CBのように転換の権利を保有しているわけなので、その分、受け取れる債券のクーポンレートは、通常のCoCo債と比べて低く設定されることになる。

参考文献

The Handbook of Hybrid Securities: Convertible Bonds, CoCo Bonds, and Bail-In (The Wiley Finance Series) by Jan De Spiegeleer Wim Schoutens Cynthia Van Hulle(2014-05-19)

Handbook of Corporate Equity Derivatives and Equity Capital Markets (The Wiley Finance Series 607) (English Edition)

The Risk Management of Contingent Convertible (CoCo) Bonds (SpringerBriefs in Finance)

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