【わかりやすく】通貨ベーシスとは?マイナスの直観的な意味、外貨ヘッジコスト、拡大/縮小の変動要因【ドル円ベーシス】

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はじめに

この記事では、通貨ベーシス(カレンシーベーシス)について、
・その直感的意味合い
・外貨ヘッジコストとの関係
・変動理由
を確認していく。

ドル円ベーシスの例で簡単に説明

以下ではドル円のベーシスについて考えることとし、簡単のために
・ドル金利が3%
・円金利が1%
・ドル円のベーシスがマイナス1%
だとしよう。

ドル円のベーシス(そして一般に全ての通貨ベーシス)は、市場でのクォートの仕方が、邦銀ではなくあくまで外銀目線で行われている、という点に注意が必要である。

この-1%の直観的な意味合いは、外銀が、金利3%でドルを貸して円を借りてこようとすると、円の借入金利が、本来の円金利である1%から通貨ベーシス1%だけ安く済む、ということである。(仮にベーシスがプラス1%であれば、円の借入金利が1%だけ高くついてしまう、という意味になる。)

以下ではこのことについて、邦銀目線、外銀目線の順番に詳しく見ていく。

邦銀から見た場合の意味

通貨ベーシスはペナルティ

邦銀から見た場合、円は潤沢に持っているが、ドルはあまり保有していないので、円を外銀に貸し出すことでドルを調達する、というケースが考えられる。

・円を金利0%(円金利1%+通貨ベーシス-1%)で外銀に貸し出し、
・ドルを金利3%で調達する
ことになる。

これはつまり、円を貸し出すことによって、ドルの本来の金利水準である3%でドルを調達したければ、円の本来の金利1%は受け取ることができず、通貨ベーシス1%分のペナルティが課される、ということである。

本来なら円資金を貸し出すことで1%の金利収入が得られるのだが、通貨ベーシスがマイナスになっていることにより、そこから通貨ベーシス1%が差し引かれてしまう。それだけのペナルティを受け入れない限り、ドルを金利3%で借りてくることはできない、ということである。

さらに言い換えれば、ドルをそのままドル建てローンで借りた場合の金利は3%だが、円との交換で借りてこようとすると、通貨ベーシス1%が追加で求められるため、実質的なドル金利は3%-(-1%)=4%になってしまう、ということになる。

通貨ベーシスはヘッジコスト

よく「ドル円通貨ベーシスは邦銀の外貨建て資産/負債のヘッジコスト」というような書き方で日経新聞に載っているが、その意味は次の通りである。

ドル建てのクーポンを受け取っている場合に、ドルをヘッジして円に変換したければ、ドルを支払い円を受け取る通貨ベーシススワップを行う。
このとき、通貨ベーシスはドルの反対サイド、つまり円サイドに乗るので、通貨ベーシスがマイナスであれば、受け取りの円金利が少なくなってしまう。
このデメリットのことを指して「ヘッジコスト」と言っているのである。

外銀から見た場合の意味

逆に、外銀から見た場合、ドルを潤沢に持っているため、ドルを邦銀に貸し出すことで円を調達する。

この場合、ドルを金利3%で貸し出せるのと同時に、円金利は1%に通貨ベーシス-1%を足して、0%で借りてくることができる。

直接に円建てローンで円を借りてこようとすると
・円金利1%を支払う必要がある
が、ドルと交換で円を借りてくると、
・実質的な円金利は1%+(-1%)=0%で済んでしまう、
ということである。

実際、外銀はこれを利用して、円を直接に円建てローンで借りてくることはせずに、すでに調達済みのドルを通貨スワップで円に換えることで円資産を購入している。

通貨ベーシスの水準が例えば-0.7%と大きくマイナスになっている場合、実質的な円の調達金利が大きなマイナスとなる。

すると、もともとの円資産が仮にマイナスの金利、例えば-0.2%しか生まなかったとしても、大きなマイナス金利で調達して、小さなマイナス金利で運用することになり、その差分だけ儲かるわけである。

通貨ベーシスの変動要因・変動理由(拡大・縮小する要因)は?

通貨の需要と供給

通貨ベーシスには通貨の需給が反映されており、人気のない通貨を貸す代わりに、人気のある通貨を借りてこようとすると、追加的な金利を支払わなければならないことを意味する。

本来であればこの人気の差は、金利差で説明がつくのであるが、今や金利差では説明しきれないほど大きな需給の差が生じているわけである。

このような需給の差は本来、裁定取引によって解消されるはずだが、そうなっておらず、放置されている。

どんな裁定取引をすればいいのか?

邦銀から見れば、ドルを借りるのに通貨スワップを用いないで、そのままドル建てローンで借りてくることが可能だとすると、ドル金利は3%で済む。

あとは以下のように、上記の外銀と同様の取引を行うことで儲かるはずである。

金利3%で調達したドルを元手にして、ドルとの交換で円を借りてくると、ドルを金利3%で貸し出せるのと同時に、円金利は1%に通貨ベーシス-1%を足して、0%で借りてくることができる。

あとはこの借りてきた円をそのまま円建てローンで貸し出せば、1%の金利収入が得られ、運用金利1%と調達金利0%の差分で通貨ベーシス分の1%が儲かる。

なぜ裁定取引ができないのか?

しかし、邦銀は大抵このような裁定取引ができない。
なぜなら、邦銀が通貨スワップを用いないで、ドル建てローンでドルを借りてくること自体が容易ではなく、また、借りてこれたとしても、市場のドル金利水準よりも割高な金利を支払わなければならないはずである。ドルの市場において邦銀は、よくわからない名前のよくわからない銀行であり、直接ドルで借りてくることは容易ではない。預金にしてもほとんどが円であり外貨預金はかなり少ない。ドルでお金を借りてくる難易度が相対的に高く、実際にドルを市場で借りてこようとすると追加プレミアムを支払わないといけない。

このように
・各通貨の金利市場が分断されている
・裁定取引が困難である
という点については、また別の機会に詳しく書いていきたい。

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