伝統的なHull-Whiteモデルとは

低次元マルコフモデルの中で最もポピュラーなのがHull-Whiteモデルである。よくHWモデルと書かれる。

 

使われているのはファクター数が1か2のどちらかであるが、ここではHull-White1ファクターモデルを取り上げる。

 

また、最近ではCVA計算などを念頭に、伝統的なHWモデルそのままではなく、より計算効率の良い実装が行われている。
これらにはGSRモデルやLGMモデルなどがあるが、ここでは伝統的なHWモデルについて考える。

 

 
HWモデルでは、ショートレートが平均回帰性ありの正規分布に従うとする。
 
平均回帰性とは大まかに言うと、
・長期的な平均水準より金利が上がると、下がりやすくなる
・長期的な平均水準より金利が下がると、上がりやすくなる
という性質だ。
 
平均回帰性の強さは、期間の異なる金利間の相関をコントロールするのに使われる。
前にも書いたように、期間構造モデルは多資産モデルであるため原資産がいっぱいある。
ここで、金利モデルにおける原資産とは、いろいろな満期の割引債である。
これら満期の異なる割引債価格の間の相関に影響を与えるのが平均回帰性の強さなのだが、詳細は別記事で書きたい。
 
教科書に必ず出てくるBlack-Scholesモデルは、原資産の変化率が正規分布に従うものだが、金利モデルの多くは原資産自体が正規分布に従うものであり、HWモデルもそうである。これは、金利それ自体が既に変化率を表しているからである。
 
HWモデルのパラメーターは以下の3つ。
 
・Theta
・Kappa
・Sigma
 
伝統的なHWモデルでは、時点に依存するパラメーターはThetaのみで、KappaもSigmaもフラットとする。
 
まずThetaは、平均回帰水準を表している。
Todayのイールドカーブを再現するように設定される。
しかしそのようなThetaは解析的に求められるため、特にキャリブレーションは必要ない。
ところが、Thetaの解析式に瞬間的なフォワードレートが含まれているため扱いづらい。
 
ちなみにモダンなHWモデルでは、あらかじめThetaをTodayの割引債価格で置き換えた式を用いる。
 
次にKappaは、平均回帰の強さを表している。
期間の異なる金利間の相関にキャリブレーションするのが理想だが、
実際にはSigmaとともに市場のスワップション価格に最適化でキャリブレーションすることになる。
 
ちなみにモダンなHWモデルでは、Kappaはトレーダーインプットになっており、5%などと適当な値が設定されている。
もちろん適当というのは完全にデタラメということではなく、Totemのバミューダンスワップション価格に合うように設定されることが多い。
 
最後にSigmaは、ショートレートのボラティリティを表しており、市場のスワップション価格に最適化でキャリブレーションする。
 
HWモデルの使い道としては、
 
・コーラブル条項付きの金利系エキゾチック商品のプライシング
・金利為替や金利株価などハイブリッドモデルの金利部分として使う
・CVAなどXVA計算の金利シナリオ生成
 
などがある。

—–