【仕組債の仕組みとカラクリを解説】クレジットリンク債(クレジットリンクノート、CLN)とは【SPCリパッケージスキーム】

簡単にわかりやすく解説

クレジットリンク債は、発行体とは異なる企業(参照組織)のクレジットリスクも引き受ける代わりに、高いクーポンが得られる仕組債である。

以下のように呼ぶこともある。
・クレジットリンクノート
・Credit Linked Note
・略してCLN

CLN発行体は、仕組債を組成している金融機関、あるいはSPCである。
CLNの特徴は以下の通り。

  • 金融機関あるいはSPCであるA社がCLNを発行
  • CLNは参照組織であるB社のクレジットを参照する
  • B社にデフォルトがない限り投資家は固定金利(または変動金利)を受け取る
  • B社がデフォルトした場合、その債券の回収額に応じて投資家は元本償還を受ける(回収額に応じて元本の一部を失う)

「デフォルト」と書いたが、正確には「クレジットイベント」である。どのような状態になったらクレジットイベントに該当するか、については契約書に書いてある。クレジットイベントは、ざっくり「借金を返せなくなった状態」と思っておけばよい。

CLNは債券の形になっているものの、実質的には、投資家はCDS(クレジットデフォルトスワップ)をやっていることになる。具体的には、

  • 投資家はCDSのプロテクションの売り
  • 発行体はCDSのプロテクションの買い

のポジションをとっている。

プロテクションの売りとはデフォルト保険の売り手であり、

  • デフォルトが起こらない限りクーポンがもらえる
  • デフォルトが起きたら、参照する債券の発行体が返済できない金額を、肩代わりして支払う

というものである。

それに対して、プロテクションの買いとはその逆だが、デフォルト保険の買い手であり、

  • デフォルトが起こらない限りクーポン(保険料)を支払う
  • デフォルトが起きたら、参照する債券の発行体が返済できない金額は、プロテクションの売り手に肩代わりしてもらえるので、損失は発生しない

というものである。

クレジットリンク債とリパッケージ債の違い

CLNの発行体は
・金融機関
・金融機関が設立したSPCや、信託勘定
などである。

SPCが発行体になる場合は必ず、投資家は
・手持ちの債券(JGBなど)を担保としてSPCに預けて、
・SPCが発行するクレジットリンク債を購入する、

という形になる。

このように、担保としてSPCに債券を預けて、担保債とは異なるキャッシュフローを受け取る仕組債を、リパッケージ債と呼ぶ。以下の関連記事も参照。

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SPC発行のリパッケージ債とCVA ⑵ | Quant College
SPCリパッケージ債のCVA | Quant College
リパッケージ債の評価 | Quant College
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リパッケージ債には、クレジットリンク債以外にも、様々な種類がある。
・通貨スワップを組み込めば外貨クーポンのリパッケージ債が作れる
・CDSを組み込めばクレジットリンク債が作れる
クレジットリンク債はSPC発行のリパッケージ債であることが多い。
リパッケージ債の具体例の一つとしてクレジットリンク債がある、と思っておけばいいだろう。

参考文献

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