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リバースデュアルカレンシー債との違い
リバースデュアルカレンシー債は、
・払い込み資金と元本償還は円建て
・クーポンは外貨建て(の固定金利)
という商品であった。クーポンだけが外貨になっているので、円貨と外貨を交換するクーポンスワップを使って組成できる。
PRDC債はこれをベースにしているとは言っても、以下の点に注意すべきである。
・クーポンの支払いは外貨建てではなく円建てで行われる
・クーポンは固定金利ではなく、為替によって大きく変化する
キャッシュフローは為替で円転後の、円建てで行われる。さらにクーポンレートは将来時点の為替によって大きく変わってくる。組成時にクーポンレートが固定されているリバースデュアルカレンシー債とは全く異なる。
PRDC債の仕組み
PRDC債(Power Reverse Dual Currency Notes)は、リバースデュアルカレンシー債をベースにして、よりクーポンを魅力的に見せるために開発された商品である。為替系のエキゾチック商品で最も有名なものの一つとなっている。
PRDC債に限らず、一般的に仕組債は通常の債券に以下3点のうち少なくとも1つの仕組みが入ったものである。
- クーポン
- 元本償還
- 早期償還条項
PRDC債の場合、クーポンと早期償還条項に仕組みが入っている。
・クーポンには必ず仕組みが入っている(PRDCクーポン)
・元本償還に仕組みが入っているものもあるが(プット償還など)、入っていないものが多い
・多くの場合、早期償還条項が付いている
PRDCクーポンの仕組み
PRDCのクーポンは以下の形をしている。
\(F \leq r_f \frac{X_t}{X_0} – r_d \leq C\)
・\(r_f , r_d\)はそれぞれ金利で、組成時に確定させる
・\(X_t\)は将来時点の為替レート
・\(X_0\)は行使レートで、組成時のスポット為替を基準に設定する
・\(C\)はキャップレートで、クーポンの上限
・\(F\)はフロアレートで、クーポンの下限
為替の上昇率でクーポンにレバレッジがかかっているのがわかる。また、クーポンに上限と下限が両方設定されていることが多い。
例えば、
\(0\% \leq 13\% \frac{X_t}{110} – 10\% \leq 3\%\)
といった形になる。
仕組債の発行後、当初2年間は上限のクーポン3%がもらえる、というようなケースが多い。
このクーポンの特徴は、
・為替が円安に行くほど高いクーポンになるが、上限(キャップ)が設定されている
・為替が円高に行くほど低いクーポンになるが、ゼロフロアが設定されている(クーポンはマイナスにならない)
債券では通常、クーポンがマイナスになることはないためゼロフロアが付いている。投資家が通貨オプションを買っていることになるので、そのプレミアムを考慮すると表面上のクーポンの条件が悪くなってしまう。そこで、クーポンに上限をつけることでオプションプレミアムを相殺している(投資家が通貨オプションを売っている)、と見ることもできる。
PRDCクーポンは実質的に、為替フォワードと通貨オプションを組み合わせた形になっている。したがって、コーラブルやノックアウトなど早期償還条項が付いていなければ、シンプルな商品の組み合わせで複製・評価できる。
早期償還条項
しかしPRDC債には、早期償還条項が付いていることが多い。早期償還条項は投資家にとって不利な条項なので、オプションを発行体に売っていることになる。そのオプションプレミアムを原資にして、クーポンの条件をより魅力的なものにできるからだ。
ところが実際に早期償還が行われた場合、その時点で元本が返ってきて、それ以降のクーポン支払いを受けられないため、投資家としては再投資リスクがある。
早期償還の種類はたいてい、以下のどちらかである。
・コーラブル条項
・ノックアウト条項(トリガー条項)
コーラブル条項は、発行体の都合の良いときに額面で早期償還してしまうものである。早期償還のタイミングが投資家からは予想できないのが特徴だが、たいてい為替が円安に行き過ぎると、発行体にとって不利になって早期償還となる。
ノックアウト条項は、発行時に定められたバリアレートに為替がヒットしたら、そこで早期償還される。バリアレートは円安方向に設定されており、為替が円安に行き過ぎると早期償還となる。バリアにヒットしそうかどうかは投資家にとっても
その際に返ってくる元本金額は、額面そのままというケース(パー償還)が多い。
しかし他にも、ノックアウト時点に応じて、発行時に決められた割合だけ割増で元本が返ってくるケースもある。
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