転換社債・優先株の取引条件と、数値解法の選択

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期中転換、強制転換、発行体コール、投資家プット

本記事では、転換社債や優先株の取引条件について、プレーンな条項と特殊条項の2つに分けて整理する。

転換社債の基本的な内容は以下の記事を参照。
転換社債 (Convertible Bond; CB) とは?メリット、デメリット、リスクをわかりやすく解説 | Quant College

プレーンな条項:3つ

まずはプレーンな条項として以下がある。

  • 期中利払い
  • 期中転換
  • 強制転換

期中利払いは、満期までの間定期的に支払われるキャッシュフローである。
・転換社債であればクーポン
・優先株であれば優先配当
と、名前は異なるが、どちらのキャッシュフローも性質は同じである。

期中転換は、投資家が転換社債や優先株を普通株式に転換できる権利であり、株式のアメリカンコールオプションである。

強制転換は、一定の期間を過ぎると、普通株式に強制的に転換される。こちらは投資家の権利ではなく義務となる。

特殊条項:4つ

加えて以下のような特殊条項がある。

  • 転換価格修正
  • 初期転換価格の将来決定
  • 発行体コール
  • 投資家プット

転換価格修正は、転換価格が過去の株価推移に依存して変化するものであり、Moving Strikeと呼ばれる。

初期転換価格の将来決定は、初期の転換価格が将来時点に決定されるものであり、ストライク(=行使価格=転換価格)が将来にならないとわからない。 このように、約定時にストライクが未決定であり将来時点に決定されるオプションを、クリケットオプションと呼ぶ。

発行体コールは、発行体が早期償還できる権利である。 これには以下の2種類がある。

  • ハードコール
  • ソフトコール

ハードコールは、通常のコールであり、無条件で行使可能なものである。

ソフトコールは、株価が一定の条件を満たされたときに行使可能となるものである。 転換社債ではソフトコールの方をよく見かける。

投資家プットは、投資家が発行体に早期償還させる権利である。投資家が持っている転換社債を発行体に売りつける権利ということで、プットという名前が付いている(プットオプションは売る権利のこと)。売りつける際の価格は契約であらかじめ決められており、元本の額面価格になっていることが多いだろう。つまり発行体は、発行時の元本額面(パー)で早期償還しないといけない。

プライシング(時価評価)に用いる数値解法の選択

転換社債のプライシングについては以下の記事も参照。
転換社債のプライシング | Quant College

プライシングするうえで問題になるのは、 実際の転換社債・優先株では、上記の様々な条項が組み合わせられている、ということだ。

まず、

  • 転換価格修正
  • 初期転換価格の将来決定

経路依存の条項なので、モンテカルロ、あるいは最小二乗モンテカルロとの相性が良い。

ところが、 一方で

  • 発行体コール
  • 投資家プット

については、行使価値と継続価値の比較が必要になるため、PDEやツリーとの相性が良い。

期中転換だけであればアメリカンオプションの解析近似解がある。
しかし、たいていソフトコールと投資家プットが入っていたりするため、数値解法としてはPDEやツリーになるだろう。
さらに追加で経路依存の条項が入ってくると、PDEなどでもある程度対応できるが、実装がシンプルという意味では最小二乗モンテカルロが選択肢に入るだろう。
最小二乗モンテカルロとは | Quant College

参考文献

The Handbook of Hybrid Securities: Convertible Bonds, CoCo Bonds, and Bail-In (The Wiley Finance Series) by Jan De Spiegeleer Wim Schoutens Cynthia Van Hulle(2014-05-19)

Handbook of Corporate Equity Derivatives and Equity Capital Markets (The Wiley Finance Series 607) (English Edition)

デリバティブズ・ビジネスI

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