【金利の期間構造モデル】ハルホワイトモデル (Hull-Whiteモデル) におけるスワップションのプライシング(時価評価、価格計算)【キャリブレーション】

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ざっくり解説

Hull-Whiteモデルのパラメーターをスワップションにキャリブレーションするには、スワップションのモデル価格を求める必要がある。これには本によっていろんな方法が書いてある。

⑴Jamshidianトリックを用いる厳密解
⑵スワップレートをNormalモデルで近似する方法
⑶スワップレートをBlackモデルで近似する方法
⑷スワップレートをShiftedLognormalモデルで近似する方法

金利モデルの教科書にだいたい書いてあるのは古典的な⑴の方法である。これは、
・スワップションを利付債オプションとみなして、
・利付債価格を割引債価格の和に分解する
方法だ。

計算の途中で、スワップションがATMになるショートレートを数値的に逆算する必要があり、そこでニュートン法などを使うが、それ以外は解析的に計算できる。

しかしこの方法は
・ワンファクターモデルにしか適用できない
・キャリブレーションの最適化を回すには計算に少し時間がかかる
といった短所がある。

そこで、実務では⑵から⑷などの近似解を用いることがある。いずれも、スワップレートをシンプルなダイナミクスで近似してしまう方法だ。

ハルホワイトモデルでは、
・ショートレートが正規分布に従う
・割引債価格は対数正規分布に従う
・フォワードLiborレートは、正規分布にかなり近いShiftedLognormal分布に従う
・スワップレートは、きれいな分布に従うわけではない

スワップレートは、フォワードLiborレートを加重平均したようなものだが、ShiftedLognormalの和がShiftedLognormalに従うわけではないため、きれいな分布に従わない。そこで、これをむりやりシンプルな分布に従うとして近似しよう、というのが(2)から(4)の方法のコンセプトである。

⑵のノーマルモデルで近似する方法は、土屋氏のXVA本に載っている。スワップレートのダイナミクスを割引債価格のダイナミクスを用いて展開して、その係数をを足元の値で固定することにより、正規分布に持ち込む。

⑶のブラックモデルで近似する方法は、Andrew GreenのXVA本に載っている。

⑷は導出にテクニックが必要であり、式展開が少しややこしい

いずれにせよ、モデル化しているのはあくまでショートレートであることにより、フォワードLiborレートやフォワードスワップレートの評価式がややこしくなってしまうわけである。このあたりは、観測できないものをモデル化しているショートレートモデルより、マーケットモデルの方が扱いやすいと感じる点である。

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