就活生向けに書いてみる。
まず、ひとくちにデリバティブクオンツといっても、いくつかの種類に分かれることに注意しよう。
デリバティブ開発工程の上流から順に並べると、デリバティブクオンツの種類は以下の通り。
⑴リサーチクオンツ
⑵クオントディベロッパー
⑶バリデーションクオンツ
⑷デスククオンツ
⑴リサーチクオンツの仕事はモデルの調査開発であり、数式をいじっている。モデルの評価式や、実装する必要のある式を導出するところまでが仕事だ。
⑵クオントディベロッパーは、リサーチクオンツ が導出した式を、既存のライブラリ内に設計・実装・テストするのが仕事だ。
⑶バリデーションクオンツはリスク管理部などミドル部署にいて、フロントが開発したモデルを独立に検証する。きちんとしている会社であれば、フロントのライブラリとは別に、ミドルのライブラリがあるので、その開発も担当するだろう。
⑷デスククオンツは、トレーダーの横に座って、トレーダーの使うツールの開発や改修を行う。
これら4種類のデリバティブクオンツを比較すると、
・数学を活かしたいなら⑴リサーチクオンツ、プログラミングを活かしたいなら⑵クオントディベロッパー
・⑶バリデーションクオンツは数学もプログラミングも両方求められるが、⑴や⑵の方が高スキルの人材が多い傾向にある
・しかし⑶バリデーションクオンツは会社によっては複数のアセットクラス、例えば為替とエクイティなど、のモデルの経験を積める。一方で、⑴や⑵はフロントの部署ごとに分かれていることが多い
・⑵クオントディベロッパーと⑷デスククオンツは、会社によっては明確な線引きがないかもしれない
・最もお金になるのはトレーダーに近い⑷デスククオンツだろうが、⑴リサーチクオンツもフロントにいるので、転職組であればなおさら高給だったりする
新卒の学生が⑴から⑷のクオンツにどうすればなれるか、について思うところを書いてみる。
⑴リサーチクオンツは、博士卒からいきなりなれる可能性もあるかもしれないが、基本的に新卒から直接は厳しいかもしれない。そもそもポストが少なく、ベテランクオンツがやっている場合が多い。会社としては証券会社、メガバンク、システムベンダーに生息している。
⑵クオントディベロッパーは、クオンツコースで採用されて、フロントに配属されればなれる。ただし、場合によっては、フロントに配属されても⑷デスククオンツ的な仕事が多いと、ライブラリ開発に専念できないかもしれない。会社としては証券会社かシステムベンダーだろう。メガバンクについては、会社によるのかもしれないが、システム実装は外部にアウトソースしているケースもあるので注意。
⑶バリデーションクオンツは、クオンツコースで採用されて、ミドルに配属されれば、なれる可能性がある。ただし、ミドル配属といってもいろんな部署・チームがあるので、デリバティブクオンツではなくリスククオンツになったり、あるいはリスク管理のただのオペレーションを行うだけ、という可能性もあるので注意。
⑷デスククオンツは、クオンツコースで採用されて、フロントに配属されれば、なれる可能性がある。
フロントに配属されるデリバティブクオンツは、
⑵クオントディベロッパー
⑷デスククオンツ
のどちらかである。
しかし問題は、クオンツコースでフロントに配属されたからといって、デリバティブクオンツになるとは限らない。例えば、
・アルゴトレードのシステム開発をするStatistical Arbitrage Quants
になる可能性もある。会社によっては、
・Statistical Arbitrage Quantsのコース
・デリバティブクオンツのコース
と分けていることもある。さらに最近ではこれに加えて、
・データアナリティクスコース
も追加されていたりする。このように細かくコースが分かれていればいいのだが、これらを全部ひっくるめてクオンツコースとして募集している場合は、必ずしも伝統的なデリバティブクオンツになれるとは限らない。
もっとも、いまのトレンドに合っているという意味では、データアナリティクスコースの方が、業態を超えて転職しやすいかもしれないので、よく考えて決める必要がある。
なお、デリバティブの分野でも機械学習は年々応用が進んでおり、将来的には確率解析よりも機械学習のナレッジの方が重要視されるかもしれない。典型的なのはディープヘッジングというトピックだが、それ以外にも今後応用が進む可能性が高い。