CVAのシミュレーショングリッドの作り方

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解説

CVAは時間方向に数値積分して求めるので、シミュレーショングリッドは細かいほどいい。しかし、ただでさえ大量の取引の時価変動をシミュレーションしないといけないのに、時間グリッドを細かく取りすぎると、計算スピードが顕著に落ちる。

 
よく見かけるのは、マーケットレートのクォートみたいに、手前ほど細かく、長期に行くほど粗くする、というものだ。1W, 2W, 3W, 1M, 2M, などとはじめは細かいが、1Y以降は1年単位、10Y以降は5年単位、といった感じだ。
 
このようなシミュレーショングリッドの取り方は、CVA感応度を用いたCVAヘッジを見据えたものだろう。長期ゾーンで細かく感応度が出たとしても、それを用いてヘッジするための商品は、満期が5年単位や10年単位でしかないためだ。
 
シミュレーショングリッドの作り方に影響を与える担保関連のパラメーターとして、MPoRがある。これはマージンピリオドというやつで、詳細は過去記事を参照のこと。
 
MPoRを考慮すると、エクスポージャー計算時点と担保計算時点がズレることになる。重要なのは、エクスポージャー計算と担保計算にはいずれも、その時点での全取引の時価が必要になる、ということだ。このため、有担保CVAでMPoRを考慮する場合、必然的にシミュレーショングリッド数が増えてしまう。
ここではMPoRの設定で一般的な10営業日を用いるとする。
 
MPoRを考慮したシミュレーショングリッドの作り方には大きく分けて2通りある。ルックバックアプローチと連続アプローチだ。
 
ルックバックアプローチは、エクスポージャー計算グリッドを決めた後、その各グリッドからMPoRだけ手前にさかのぼった時点をシミュレーショングリッドに加える。こうすると、エクスポージャー計算グリッドが粗くなっていれば、担保計算グリッドも同じだけ粗くなることになる。必要最小限のグリッド数に抑えたい場合は、ルックバックアプローチが有効だろう。
 
しかしながら、ルックバックアプローチでは、担保残高のパスを途切れ途切れにしか生成できない、という問題がある。
例えば、MPoRが2Wで、エクスポージャー計算グリッドが3Mごとになっているとしよう。エクスポージャー計算時点から見て2W前の担保残高を知りたいわけだが、そのためには、直近に受け払いした担保金額を知らないといけない。
ここで、一般に担保の受け払い金額は、その時点における担保残高に依存することに注意しよう。なぜなら、最低引渡金額を考慮しようとすると、担保の受け払い金額は、その時点における担保残高がわからないと計算できないからである。
 
一方で、連続アプローチは、MPoRが10営業日であれば、10営業日ごとにシミュレーショングリッドを置くものだ。つまりだいたい2週間ごとにグリッドを置くので、かなりグリッド数が増える。
連続アプローチでは、エクスポージャー計算にインプットとして用いる担保は、1つ手前のグリッド、つまり10営業日前のグリッドで求めた値を用いればよいことになる。MPoRは担保授受が滞る期間を表しているため、エクスポージャー計算グリッドからMPoRだけ手前にさかのぼった時点における担保残高を用いるからだ。

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