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バーゼル規制の指標4つ
バーゼル規制には4つの数値指標がある。
- 自己資本比率
- レバレッジ比率
- 流動性カバレッジ比率
- 安定調達比率
よく話題にあがるのは自己資本比率で、バーゼル規制といえば自己資本比率というイメージがある。それは自己資本比率が昔からバーゼル規制にあった指標で、それ以外の3つ(レバレッジ比率、流動性カバレッジ比率、安定調達比率)はリーマンショックを経て、後から追加されたものだからだ。
1.自己資本比率
自己資本比率の特徴は以下の通り。
- 自己資本比率 = 自己資本 ÷ リスクアセット
- 自己資本と資産を比較する指標
- 資産は元本ベースではなくリスクベースで測る(リスク調整後の資産で測る)
- リスクベースで測るとはつまり、リスクの高い資産ほど大きな重み(リスクウェイト)を乗じて、大きく見積もるということ
- リスクベースで測った資産のことをリスクアセット、Risk Weighted Asset (RWA) などと呼ぶ
- リスクアセットは大きく分けて以下3種類の合計
- 信用リスクアセット
- マーケットリスク相当額
- オペレーショナルリスク相当額
- 自己資本比率規制では、リスクアセットの一定割合(8%等)以上を自己資本として積むことが要求される
2.レバレッジ比率
これに対して、レバレッジ比率の特徴は以下の通り。
- レバレッジ比率 = 自己資本 ÷ エクスポージャー
- 自己資本と資産を比較する指標(自己資本比率と同じ)
- 資産はリスクベースではなく元本ベースで測る(リスク調整をしないそのままの資産で測る)
- 元本ベースで測るとはつまり、元本にリスクウェイト乗じないということ
- 元本ベースで測った資産のことをエクスポージャーと呼ぶ(エクスポージャーのニュアンスは、「リスクにさらされている金額」)
- エクスポージャーは以下4種類の合計
- オンバランス
- デリバティブ取引
- 証券金融取引(レポ取引等)
- オフバランス
- レバレッジ比率規制では、エクスポージャーの一定割合(3%等)以上を自己資本として積むことが要求される
- 目的は過剰なレバレッジ(借入等による資産の膨張)を抑えること
- レバレッジ解消→資産価格下落→レバレッジ解消→資産価格下落→・・・という悪循環(および金融システム全体の不安定化)を回避するため
自己資本比率と比較すると、資産の一定割合を自己資本として積む要求なのは同じ。自己資本比率のリスクアセットに対応するものが、レバレッジ比率のエクスポージャーである。しかし資産について、リスク調整をしないで元本ベースで測る点が異なる。
3.流動性カバレッジ比率 (Liquidity Coverage Latio: LCR)
3つめの流動性カバレッジ比率、4つめの安定調達比率は、1つめの自己資本比率、2つめのレバレッジ比率とは少し毛色が異なる。
- 流動性カバレッジ比率 = 適格流動資産 ÷ ストレス時の30日間に必要な流動性
- 分子は支払いにあてられる資産(運用サイド)
- 分母は資金調達(負債+自己資本)により生じる短期の支払い(調達サイド)
- 負債+自己資本と、資産を比較する指標
- 金融ストレス下における資金繰りリスクを抑えるために、流動性の高い(すぐに現金に換えられる)資産を一定割合以上持つ(手元の流動資産が、短期の支払いに必要な額を上回る)ことを要求
分子が資産、分母が負債+自己資本に対応している。自己資本と資産を比較するのではなく、負債+自己資本と資産を比較する指標。
4.安定調達比率 (Net Stable Funding Ratio: NSFR)
安定調達比率は流動性カバレッジ比率と同じく、負債+自己資本と、資産を比較する指標だが、異なる部分もある。
- 安定調達比率 = 安定調達額 ÷ 所要安定調達額
- 分子は安定的に調達された負債+自己資本(調達サイド)
- 分母は流動性を生まない資産(運用サイド)
- 負債+自己資本と、資産を比較する指標
- 運用と調達のミスマッチを抑えるために、安定かつ長期の資金調達を要求
分子が負債+自己資本、分母が資産に対応しており、流動性カバレッジ比率とは分子・分母が逆になっている。
まとめ
- 自己資本比率、レバレッジ比率は、ともに自己資本(分子)と資産(分母)を比較する指標
- 資産について、自己資本比率ではリスクウェイトを乗じたリスクベースで計測するが、レバレッジ比率ではリスクウェイトを乗じない元本ベースで計測
- 流動性カバレッジ比率、安定調達比率は、ともに負債+自己資本と資産を比較する指標
- 流動性カバレッジ比率では分子が資産(運用サイド)、分母が負債+自己資本(調達サイド)に対応し、資金調達から生じる短期の支払いを流動資産でまかなえることを要求する
- 安定調達比率では分子が負債+自己資本(調達サイド)、分母が資産(運用サイド)し、運用に必要な資金を安定的な手段で調達できていることを要求する
- 流動性カバレッジ比率と安定調達比率では分子・分母に対応するものが逆になっている
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