債券市場のイールドカーブを期間方向に補間するのに用いる。債券トレーダーの間では有名で、実質的な標準モデルになっているようだ。
特徴は以下の通り。
・3つのパラメーターがそれぞれイールドカーブの水準、傾き、曲率を表しており、実務家にとってわかりやすい
・ファクターが最低限の数にまで絞られており、オーバーフィッティングの恐れが少ない
・マーケットでクォートされているグリッドの債券イールドを完全には再現しない。つまりキャリブレーション誤差が生じる
Nelson-Siegelモデルでは、各満期Tの瞬間フォワードレートに以下の式を仮定する。
f(T) = β0 + β1 exp(−T/τ) + β2 (T/τ) exp(−T/τ)
ここで、β0, β1, β2の3つがパラメーターであり、それぞれ、イールドカーブの水準、傾き、曲率をコントロールする。
満期Tにゼロと∞をそれぞれ入れてみると、
f(0) = β0 + β1
f(∞) = β0
となる。したがって、パラメーターβ1は、
β1 = f(0) – f(∞)
となる。
まずβ0は、満期Tに依存しない項の係数であるため、β0が動くとイールドカーブ全体がシフトすることがわかる。これと f(∞) = β0 を合わせて考えると、
・β0 は長期的な金利水準を表し、イールドカーブ全体の水準をコントロールする
ことがわかる。
次に、β1は、満期について減衰する項の係数であるため、満期が長いほどβ1が及ぼす影響は小さくなっていく。したがって、
・β1の符号がプラスの場合、右下がりのカーブ
・β1の符号がマイナスの場合、右上がりのカーブ
を表現できる。これと β1 = f(0) – f(∞) を合わせて考えると、
・β1は長短金利差を表し、イールドカーブの傾きをコントロールする
ことがわかる。
最後に、β2は、満期について「増加する項」と「指数的に減衰する項」の積にかかる係数である。このため、満期方向に見ていったときに、
・β2の符号がプラスの場合、いったん増加した後に減少する
・β2の符号がマイナスの場合、いったん減少した後に増加する
というカーブの「こぶ」形状を表現できる。このことから、
・β2はカーブの曲率を表し、「こぶ」の曲がり具合をコントロールする
ことがわかる。
ところで、瞬間フォワードレートの式に含まれているパラメーター「τ(タウ)」は、カーブの「こぶ」をどの満期のあたりに作るか、をコントロールする。
しかし実務では、あらかじめ適当な値を設定し、所与としてその他の3つのパラメーターを推定する。「τ」の値をいろいろと変えてみて、最もフィッティングがよくなる「τ」を採用する、ということになる。