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はじめに
就活中の理系や経済系の院生で、アクチュアリーとクオンツのどっちにすればいいか悩んでいる人もいるようだ。なんとなくクオンツの内定を蹴ってアクチュアリーを選んだが就職後に後悔した、というパターンや、その逆パターンもあるかもしれない。
しかしいったん就職してから、アクチュアリーがクオンツに転職したり、その逆、というのはなかなか容易ではないと思われる。なにしろ必要な資格・スキルや、仕事内容が大きく異なるからである。
クオンツとアクチュアリーの違いの概要については、以前に書いたことがあるので、以下の記事も参考にして頂きたい。
今回は上の記事で書ききれなかった点を補足していく。
具体的には以下の通り。
- 新卒就活における就職難易度の違い
- キャリアで必要な資格の違い
- 就職後の勉強量の違い
- 仕事内容の系統の違い
- 激務度合いの違い
- 転職可能性の違い
- 年収の違い
就職/就活難易度の違い
学生が最も気になるのがこれかもしれないが、回答としては「どっちも難しい」となる。採用人数の少なさという点では、クオンツの方が募集している企業が少ないので、クオンツ採用の方がアクチュアリー採用より倍率が高く難しいかもしれない。しかし大手にしか行きたくない、ということであれば、アクチュアリーでもクオンツでもどちらにせよ同じくらい難しいだろう。
難しい要因は以下の通り。
・コース別の採用人数が少ない
・昔とは違って、金融業界への就職を考える理系学生がかなり多い
・実際に採用される学生の大学が、有名国立大や早慶に大きく偏っている
とにかく採用人数が少ない、というのがアクチュアリーとクオンツに共通して言えることである。ここで重要な違いとして、
・クオンツは大手企業でしか募集しておらず、準大手やネット証券などではそもそもクオンツの需要がない
・アクチュアリーは大手企業に加え、準大手やネット系でもアクチュアリーの需要がある
という点が挙げられる。
クオンツは準大手以下でも、もしかしたら中途採用であればポジションがあるのかもしれないが、大手以外は基本的にベンダーのパッケージシステムを使うので、自社のクオンツが自前開発したり独自に調査したり、という仕事の需要があまりない。システムベンダーや場合によってはコンサルなどに外注してしまう、ということである。なので新卒採用でクオンツを募集することはほぼない。
一方で、アクチュアリーは特に生保であれば、自社で確保できていないと話にならないことから、アクチュアリー人材に対する需要が業界全体で安定して存在している。そういうわけで、新卒採用でアクチュアリーを募集している企業の数が多い。業態も生保に加えて信託や、場合によっては損保でも募集しているわけなので、クオンツに比べると募集している企業数が多いといえるだろう。
キャリアで必要な資格の違い
これが最も大きな違いだと思う。
- アクチュアリーは就職後に資格取得が必須
- クオンツは就職後も資格を取る必要がない
アクチュアリーの場合
アクチュアリーは将来的に正会員になることを大前提に新卒採用される。
転職時も、アクチュアリーは年齢に応じて必要な科目数を合格していないと、採用のハードルが高くなってしまう。30代以降は正会員になっている前提で募集要項が作成されると思われるため、とにかく資格取得が大前提となる。
クオンツの場合
一方で、クオンツについては、新卒採用時に、
・有名大学の理系院生
というある意味での資格が必要にはなるが、それ以外は、
・数学の基礎が身に付いているか、
・今後、プログラミング能力を伸ばしていけそうか、
あたりが問われるくらいである。このため、
・現在何か資格を持っているか
・将来的に資格を取れそうか
という点が問われることはない。
就職後の勉強量の違い
ここでは、仕事プラスアルファで行うプライベートでの学習の大変さの観点で見ていく。
アクチュアリーの場合
アクチュアリーの場合、就職後の学習コストは非常に高い。とにかく大変とのことである。
大変である理由としては、おそらく以下のような感じだろう。
- 科目数が多い。試験範囲が広い。なにより問題が難解。
- 基礎さえ押さえれば受かるわけでもなく、資格試験のための勉強が必要
- 働きながらの資格勉強
- 本業のアクチュアリー業務もけっこう大変
- 資格予備校などで効率的に教えてもらえる仕組みがない
- 世間に出回っている教材と過去問の難易度飛躍が大きい
ということで、試験勉強というものに対してかなりの耐性がないと乗り切れないと思われる。実際、クオンツと比較したうえでアクチュアリーに進む人は、誤解を恐れずに言えば「試験勉強好き」という感じの人が多い印象である。これは博士課程に進む人のような「研究好き」というのとも大きく異なる。むしろ「試験勉強好き」というくらいの人でないと、仕事しながら難関資格に受かるというのはハードルが高いだろう。
クオンツの場合
一方、クオンツの場合、若手はもちろん、経験年数を重ねても、新しい技術にキャッチアップする必要はあるため、ある程度プライベートの時間を使って学ぶことが求められる。若手は特にプログラミング能力を早く実務レベルにまで引き上げないと仕事がこなせないので、プライベートでも学習する必要があるだろう。
しかしながら、何らかの資格を取るよう指示を受ける、ということはほとんどない。証券アナリスト試験や、バイサイドならCFA試験を受けるようすすめられる場合もあるかもしれないが、クオンツはアクチュアリーのように資格試験のためだけの勉強というのは必要ない。
要するに
- アクチュアリーは業務に必要な勉強も必須だろうが、それプラスアルファで資格勉強が必要になる
- クオンツは業務に必要な勉強は必須だが、資格のための勉強は必要ない
仕事内容の系統の違い
資格の位置づけの違いと並んで、仕事内容の系統の違いも重要である。
アクチュアリーの場合
アクチュアリーはたいていの理系学生が想像するような「理系就職」というのとは程遠く、「文系就職」に近いと思っておいた方がいいだろう。ただし、もちろん証券のリテール営業のような泥臭い体育会系の仕事ではなく、経理や企画といった本部セクションでの業務、というイメージに近い。
アクチュアリーも業務の中で数学を使う機会は多いものの、クオンツに比べてその頻度は少ないだろう。また、アクチュアリー資格の1次試験ではかなり数学の素養が求められるが、普段の業務で使う数学となると、その難易度はクオンツに比べると基本的なものが多い印象である。
ネットで検索すると、アクチュアリーの仕事がつまらないというような話がよく出てくるが、管理人の身の回りでは、(数学を使うかどうかとは関係なく)アクチュアリーの仕事にやりがいを感じている人はかなり多い。このあたりは「人による」としか言えないのだろうが、「数学を使える仕事」とだけ聞いてアクチュアリーに食いついた理系学生の場合、就職後に後悔する人が出てきてもおかしくないと思う。
クオンツの場合
クオンツはアクチュアリーに比べると数学を使う機会は多く、その難易度もどちらかといえば難しいものが多い。アクチュアリーは経済系などの文系出身も多いが、クオンツではかなり少数派となっている。
もちろんクオンツについても、普段の業務でどれくらい数学を使うかについてはピンキリであり、ケースバイケースだ。クオンツになった人であっても、「思っていたほど数学を使わない」と言って残念がる人や、理論的な研究をやりたくてアカデミアに戻る人も多い。
デリバティブクオンツでも、トレーダーをサポートするデスククオンツであれば、素早くエクセルツールを直せる能力など、数学とはあまり関係ない力が重要だったりする。
リスククオンツであれば、規制動向を正確に把握するためにバーゼル文書など英語のドキュメントを大量に読みこなさないといけなかったり、リスクマネージャーやフロントとのコミュニケーションも大事である。
バイサイドのクオンツであれば、集めたデータをモデルに食わせられる形に変換するなどのデータハンドリングや、バックテストをはじめとする試行錯誤などサイエンスというよりはアートというべき仕事も多いだろう。
激務度合いの違い
クオンツとアクチュアリーでどちらの方が激務であるか、については一概にどちらとは言えないだろう。しかしながら、全般的な傾向として言えることは以下の通り。
- アクチュアリーは決算関連の繁忙期など、激務度合いに季節性がある(ただし年金の制度変更などでイレギュラーな時期に忙しくなることはあるだろう)
- クオンツが忙しくなるのは、システムやツールの不具合対応や、市場慣行や規制関連で緊急性の高い開発プロジェクトに参画した場合、などであり、激務度合いに季節性はない(忙しくなる時期が事前にわかるわけではない)
どちらかというと、アクチュアリーの方が「激務でつらい」と言っている人は多い印象である(もちろんあくまで個人的な印象に過ぎないが)。
転職可能性の違い
印象としては、アクチュアリーの方が明らかに求人は多く、資格という明確な参入障壁があるので、転職のしやすさという点ではアクチュアリーの方が強いと思われる。もちろん、順調に科目合格を積み重ねていれば、という条件付きである。
これは新卒採用の話と同じで、
・クオンツはアクチュアリーよりも求人が超大手企業に集中している
・クオンツはアクチュアリーよりも景気変動の影響を受けやすい
というのが要因として挙げられるだろう。
加えて、アクチュアリーはコンサルタントに転身するケースも多いようだ。
一方で、クオンツがコンサルタントになることはほぼないと思われるが、データサイエンティストに転身した場合はコンサル色が強くなるだろう。また、クオンツエンジニアから機械学習エンジニアに転身するケースは結構多い。
年収の違い
これはアクチュアリーやクオンツという職種の問題ではなく、
・どの業界・業種で働くか
・どの企業で働くか
によって決まる問題だと思う。
年収は「何ができるか」よりも「どこにいるか」で決まると思っておいた方が良い。主な理由は以下の通り。
・そもそも業界によって年収水準が異なる
・給与テーブルは企業ごとに決められており、従業員ひとりの努力で変えられるようなものではない
・ボーナスの支払い方も企業ごと決められており、従業員ひとりの努力で変えられるようなものではない
業界ごとの年収水準としては金融は全般的に高めであり、中でも、アセマネや損保はまったりしている割に年収が高い、という話をよく聞く。某アセマネでインターンしていた際、クオンツの社員さんもかなり羽振りが良さそうだった。
なぜかはわからないが、生保より損保の方が待遇が良いことが多いようだ。
証券も銀行や信託に比べれば高いが、マーケットなど外部環境によるボーナス変動が比較的大きい点に注意が必要である。
ざっくりとしたイメージとしては
アセマネ>損保・証券>生保>信託>銀行
という感じだろうか。景気動向やボーナスの出方によっても変わってくるほか、最終的には個別企業によるとしか言えないが、業界ごとの年収水準からすると、アクチュアリーの方がクオンツよりも高くなる傾向にあるかもしれない。
まとめ
無理やり感があるが、ざっくりまとめると以下の通り。
- アクチュアリーもクオンツも就職難易度はどっちも難しい。求人数はクオンツの方が少ないと思われる。
- アクチュアリーは資格取得が至上命題だが、クオンツは必ずしも特定の資格を取る必要はない
- 就職後の勉強の大変さは、仕事をしながら難関資格に受かる必要があるので、アクチュアリーの方が大変
- 仕事内容はどちらかというと、クオンツの方が「理系就職」寄り、アクチュアリーの方が「文系就職」寄り
- 激務度合いは、アクチュアリーの方が季節性による繁忙期があり、大変と言っている人が多い印象
- アクチュアリーの方が求人数が多く、資格という参入障壁もあるので、転職しやすい
- 年収は景気動向や個別企業によって変わるので一概に言えないが、どちらかというとアクチュアリーの方が高い傾向にあるとの印象
このようにアクチュアリーとクオンツで異なる点は多いため、前もって違いを慎重に確認したうえで、自分に合いそうな方を選ぶことをおすすめする。
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