ボラティリティサーフェイスの無裁定条件:2つある

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ボラティリティサーフェイスとは

ボラティリティスマイルは、特定の満期を固定して、ストライク方向にインプライドボラティリティを並べてつないだ曲線のこと。

ボラティリティサーフェイスは、全ての満期に渡って、ボラティリティスマイルをつないだものである。つまり1つの原資産について、

  • 縦軸をオプション満期
  • 横軸をストライク(または、マネーネスやデルタ)

としてボラティリティをマトリックス形式でプロットものである。

補間・補外がまずいと裁定機会が生じる

市場のボラティリティサーフェイスをいい加減に補間・補外すると、裁定機会が生じてしまう。無裁定になるには、以下の2つの条件を満たしていないといけない。

  1. カレンダースプレッド条件
  2. バタフライスプレッド条件

カレンダースプレッドが満期方向の補間・補外
バタフライスプレッドが
ストライク方向の補間・補外
に関係している。

(1)カレンダースプレッド条件

⑴カレンダースプレッド条件とは、ドリフトの影響を無視すれば、

  • ストライクが同じであれば、満期の長いオプションの方が価値が高い

というものである。
実際はドリフトがあるのでもう少し話が複雑になってしまうが、イメージとしては上のような感じで良いだろう。

例えば、満期が1Yと2Yのオプションを考える。
ここで、計算基準日を1Yにしよう。

すると、満期1Yのオプション価値は残存期間がゼロなので、本源的価値しかない。つまりオプションの満期でのペイオフそのものである。

一方、満期2Yのオプション価値は残存期間が1Yだけ残っているので、本源的価値に加えて、時間価値もある。このため、1年後において、満期2Yのオプション価値は、満期1Yのオプション価値より大きい。

このことから、時点ゼロにおいても、満期2Yの方が満期1Yよりもオプション価値が大きい、ということがわかる。

要するに、満期が長いほどオプション価値が大きくなるということなので、

  • オプション価値は満期に関する一階微分の符号がプラス

ということである。これがカレンダースプレッド条件である。ただしドリフトの影響を加味すると式はもう少しややこしくなる。

(2)バタフライスプレッド条件

⑵バタフライスプレッド条件は、

  • バタフライ取引のオプション価値は符号がプラス

というものだ。バタフライについては以下の過去記事を参照。
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ここで、

  • ストライクKのストラドル:-2/ε^2 単位
  • ストライクK-ε, K+εのストラングル:1/ε^2 単位

のバタフライのポジションを考えると、
その価値はε→0の極限において、
オプション価値のストライクに関する二階微分となる。

したがって、バタフライ取引のオプション価値は符号がプラス、という条件を言い換えると、

  • オプション価値はストライクの二階微分の符号がプラス

ということになる。

一般に、オプション価値をストライクについて、

  • 一回微分するとデジタルオプション価値が出てくる
  • 二回微分すると確率密度関数が出てくる

このことから、⑵バタフライスプレッド条件は、言い換えると、

  • 確率密度関数の値は符号が正

ということであり、こう言われると当たり前であり、当然成り立つと思うだろう。しかしながら、いい加減にスマイルをストライク方向に補間・補外すると、これが成り立たなくなる、というのはよくあることである。

参考文献

The Volatility Smile (Wiley Finance)

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