キャリブレーション対象となる市場価格は、MarkitのTotemサービスで還元されて来るコンセンサスプライスである。
これにプライシングモデルをキャリブレーションするのだが、一般的な手順は以下の通り。
⑴スマイル補間モデルを、バニラオプションのコンセンサスに合わせる
⑵スマイル補外モデルを、比較的シンプルなエキゾチックオプションのコンセンサスに合わせる
⑶エキゾチック商品のプライシングモデルを、エキゾチック商品のコンセンサスに合わせる
⑷異なる原資産の相関を、バスケット型商品のコンセンサスに合わせる
まず、キャリブレーションにおいてイールドカーブは所与とする。ここで、イールドカーブとは、スワップレートなどから逆算したゼロレートやディスカウントファクターのことである。
⑴は、バニラオプションのコンセンサスに対してスマイルモデルをキャリブレーションする。スマイルモデルはスマイルの補間に使われるモデルである。スマイルの補外にはたいてい補間モデルとは異なるロジックが用いられる。
⑵は、スマイルの両端にも依存する商品について、コンセンサスに合うように、スマイル補外ロジックのパラメーターを調整する。スマイルの両端の形状に依存する商品としては、金利系だとCMS、エクイティ系だとバリアンススワップである。
⑶は、スマイルのダイナミクスに依存する商品について、コンセンサスに合うように、エキゾチック商品用プライシングモデルのパラメーターを調整する。スマイルのダイナミクスに依存する商品は、要するに経路依存の商品である。
⑷は、為替やエクイティであればバスケット商品に相関を合わせる。
金利系は特殊で、⑶と⑷の順番が逆になる。金利では、単一の通貨しか参照しない商品であっても、期間構造によって、異なる期間の金利にはシステマティックに相関が入っている。この金利相関をコントロールするモデルパラメーターを、バミューダンなど、金利系エキゾチック商品のコンセンサスに合わせる。金利系は為替系やエクイティ系に比べて、経路依存性の強い商品がそれほど多くはない。このため、より重要な⑷の金利相関を合わせる工程を先にやることになるだろう。
ここで重要なのは、例えば⑶の段階でコンセンサスにうまくフィットしなければ、⑷でもコンセンサスにうまくフィットしなくなる、ということである。このようにモデルにはウォーターフォール構造があり、上流工程でマーケットに合わなければ、それより下流の工程でもマーケットに合わなくなることが多い。
以上の手順について、例えばエクイティデリバティブであれば、以下の通り。
⑴SVIなどのスマイル補間モデルを、エクイティのバニラオプションに合わせる
⑵バリアンススワップのコンセンサスに合うように、スマイル補外ロジックのパラメーターを調整する
⑶単一銘柄のオートコーラブルのコンセンサスに合うように、確率ローカルボラティリティなど、エクイティのエキゾチック商品用プライシングモデルのパラメーターを調整する
⑷バスケット型のオートコーラブル、例えば日経とS&Pのワーストパフォーマンスを参照する商品のコンセンサスに合うように、株価相関カーブのパラメーターを調整する