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解説
xVAは対顧ざやと何が違うのか。
xVAによって対顧ざやが広がったということか。
といった質問を受けることがあるので整理。
まず、xVAは、無裁定価格が基準価値からどれだけ乖離しているかを表す。つまり、
無裁定価格 = 基準価値 + xVA
である。
ここで、基準価値というのは通常、OISディスカウントによる価値(完全担保前提の価値)である。
もちろん、基準価値はLIBORディスカウントであってもよいが、割引がOISであろうがLIBORであろうが重要なのは、基準価値の割引金利と、xVAの割引金利および各種スプレッドの基準金利が一致していなければならない、ということである。
基準価値がOISディスカウントであれば、xVAの割引もOISであり、エクスポージャーに掛け合わせるクレジットスプレッドやファンディングスプレッドも、OIS割引金利からのスプレッドになっていないといけない。
基準価値がLIBORディスカウントであれば、基準価値は小さくなるが、
それと同時に、xVAの各種スプレッドも小さくなるため、xVA(マイナスの値)の絶対値も小さくなり、
小さい基準価値から小さいxVAを引くことで、結果的に、基準価値がOISディスカウントの場合と同じにならなければならない。
このあたりの話はまた別の機会に説明したい。
次に、無裁定価格というのは何かと言うと、これは、デリバティブの原資産と銀行預金をうまく組み合わせて、デリバティブが生み出すキャッシュフローを複製したとき、その原資産と銀行預金のポートフォリオの時価のことを言う。
これはつまり、
無裁定価格 = 材料費
ということである。
会計の原価計算で習うが、商品の原価は以下のように分解される。
原価 = 材料費 + 労務費 + 経費
無裁定価格は、この中でいうところの材料費に当たる。
なぜかというと、上で見たように、デリバティブの無裁定価格は、そのデリバティブを複製するのに必要な材料の時価を合計したもの、だからである。
細かいことを言うと、実際の材料費は、無裁定価格に加えて、ヘッジコスト(ビッド・オファー・スプレッド)も含まれる。
一方で、デリバティブを売っている金融機関にとっては、材料費に加えて、労務費と経費がかかるため、これらを回収しない限り、利益が出ない。そこで、顧客に売る際には、対顧ざやを乗せた価格を提示するわけである。
よって、
銀行から見た対顧ざや = 労務費 + 経費 + 銀行の利益
となる。
以上を総合すると、
対顧価格 = (材料費) + (労務費 + 経費 + 銀行の利益)
= (無裁定価格 + ヘッジコスト) + (銀行から見た対顧ざや)
= (基準価値 + xVA + ヘッジコスト) + (銀行から見た対顧ざや)
と分解できる。
ここで問題は、顧客から見た対顧ざやが、どこからどこまでを含むのか、ということである。
顧客として、例えば事業会社を考えると、彼らが手元で(Bloomberg端末などで)デリバティブ価格を計算するとすれば、それはLIBORディスカウントによる基準価値であろう。よって、
対顧価格 = (基準価値) + (顧客から見た対顧ざや)
となる。上との対応関係を見ると、
(顧客から見た対顧ざや) = (xVA + ヘッジコスト) + (銀行から見た対顧ざや)
ということになるので、xVAによって対顧ざやが広がった、と思うだろう。
重要なのは、xVAは、銀行から見ると、あくまで材料費の値上げを価格転嫁した、というだけであり、対顧ざやとは関係ないのだが、事業会社から見ると、LIBORディスカウントによる基準価値からの乖離が全て対顧ざや(銀行の取り分)と解釈するため、xVAによって銀行の取り分が増えた、と感じるわけである。
ここで、「材料費の値上げ」、と言ったが、正確には、「今まで認識していなかった材料を、新たに材料として認識するようになった」と言った方がいいかもしれない。
この新たな材料とは、デフォルトやファンディングによって失うキャッシュフローのことである。
このあたりの話も別途詳しく考えたい。
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