最近では日系金融機関でもCVA導入が急速に進んでおり、隔世の感がある。しかし外資系では、フロントプライシングではすでにMVA、KVAまで実装されており、MVAの会計導入を伺っているような状況だ。MVAは既に会計導入している会社もあるが、まだかなり少数派との印象だ。
MVAは当初証拠金、いわゆるIMのファンディングコストであり、会社によってはFVAの中に混ぜてこっそり会計導入しているケースもあるようだ。
MVAの計算はCVAなどと比べてもかなり煩雑である。SIMMと呼ばれる業界標準のIMモデルで、将来時点のIMを計算しないといけない。
SIMMによる計算は、
・様々な市場リスクに対するポートフォリオの感応度をインプットとして受け取り、
・所定の掛け目を感応度にかけて、
・相関を考慮して足しあげる、
というもので、それ自体の計算はシンプルである。
しかし問題は、ポートフォリオに対してたくさんの感応度を計算しないといけない点である。この感応度計算をモンテカルロの中でやらないといけない。ポートフォリオには普通、バミューダンなどのエキゾチック取引も混ざっているため、エクスポージャー計算には最小二乗モンテカルロが用いられる。これに対して通常の数値微分により感応度を計算するのはかなり煩雑である。
そこで市場でよく用いられているのは、近似解法である。そのうちシンプルなものは、基準日におけるIMだけをまじめに計算して、将来のIMは、エクスポージャーの比率でスケール変換することでざっくり求める、という方法だ。しかしこれではかなり誤差が大きいことが知られている。
そんなわけで市場では、高速にMVAを計算する方法が開発中である。リスクマガジンに出ていた方法のポイントを挙げると、以下の通り。
・スワップレートやスワップションボラティリティなど、観測できる市場変数で微分するのではなく、シナリオ生成に用いているモデルのパラメーターで微分する
・その微分を市場変数についての微分にうまく変換してあげる
・微分計算には自動微分を用いることにより高速化する
自動微分についても今度別記事で大まかな概要を紹介したいところだ。
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