金融工学関連のテキストなどを見ていると、
「オプションの評価モデルにはブラックショールズモデル、二項モデル、モンテカルロシミュレーションなどがあるが」
という記述がよく見られる。このような書き方は誤解を招きかねないと思われる。なぜなら、二項モデル(正しくは二項ツリー)やモンテカルロシミュレーションはモデルではなく、数値計算法だからだ。
オプションに限らずデリバティブ評価にあたって、評価ロジックは次の3つの組み合わせにより決まる。
- 商品
- モデル
- 数値計算法
商品とは、金利スワップ、バニラオプション、バリアオプションなど、評価対象のプロダクトのことだ。
モデルとは、原資産や状態変数をどのように指定し、それらにどのようなダイナミクスを仮定するかを指す。例としては、ブラックショールズモデル、Hull-Whiteモデル、Hestonモデル、Local Volatilityモデル、HestonSLVモデルなど、多数ある。
数値計算法とは、商品とモデルの組み合わせを所与として、評価額を求めるために選択される数値計算の手法のことである。例としては、解析解、数値積分、各種ツリー、有限差分法、モンテカルロ法などである。
商品とモデルの組み合わせによって、選択できる数値計算法はある程度しぼられてくるが、どれを選択するのかは評価ロジックの決定者に委ねられる。
ただ単に二項モデルや二項ツリーと言われたところで、モデルに何を仮定しているのかわからない。また、そもそも二項ツリー自体はモデルではない。
冒頭のような書き方をした人が言いたかったのはおそらく、モデルにブラックショールズモデルを採用し、数値計算法として二項ツリーを選択した、ということだろう。
二項モデルと言われただけでは、原資産や状態変数をどう設定し、それらにどのようなモデルを仮定したのか、何も伝わってこない。
モンテカルロシミュレーションも、それ自体はモデルではない。冒頭のような書き方をした人が言いたかったのはおそらく、モデルにはブラックショールズモデルを用いて、数値計算法としてモンテカルロ法を選択した、ということだろう。
モデルと数値計算法は区別して、それぞれに何を選んだのかを明示しないと、具体的にどのようなロジックで評価しているのかわからない。
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