数値計算法の選択

数値計算法には、解析解、数値積分、ツリー、FDM、モンテカルロがある。FDMは文献によっては有限差分法やPDEと書いてある場合もある。

解析解があれば、問答無用でそれを使う。

解析近似解がある場合は、状況によるが、近似の精度が良かったり、その誤差が表面化しないケースであれば、できれば使いたいところである。
 
解析解や解析近似解がない場合には、止むを得ず数値計算になる。
数値計算で必要になるのは次の2つである。
 
・各Fixing日における分布関数あるいは密度関数
・ペイオフ関数
 
密度関数がわかっていて、ペイオフ関数がシンプルな場合は、数値積分が選択肢となる。
密度関数が求められるかどうかは、モデルのダイナミクスがどれくらい複雑かによる。
解析的に出る場合もあるし、近似的に出せる場合、あるいはノンパラメトリックに出せる場合もある。
密度関数がわかれば、シンプルなペイオフ関数であれば数値積分で価格を計算できる。
しかし数値積分は、ファクターが増えると計算がかなり非効率になるため、そのような場合はFDMかモンテカルロになるだろう。
 
モデルがシンプルな場合にはツリーも選択肢となる。
ツリーの場合は、数値積分と異なり、密度関数全体がわからなくてもよい。実際に使うのは分布の期待値と分散ないし共分散だけだからだ。これらが求められるようなモデルの場合は、ツリーも選択肢となる。
ツリーは満期からバックワードに計算するのでコーラブル商品と相性が良い。
一方で、数値積分と同様、ファクターが増えると苦しくなる。実務で見かけるのはほとんどワンファクターの場合で、たまにツーファクターも見かけるが、スリーファクターになるとほとんど見かけない。
 
コーラブル商品の場合は、ファクターが多すぎなければ有限差分法を使う。3ファクターや4ファクターくらいであればモンテカルロではなく有限差分法でやってしまうファームもけっこうあるようだ。
有限差分法もコーラブル商品との相性が良いが、コーラブルに限らず、バリアオプションなどにも応用されている。
 
ファクターが5つ以上あったり、ターゲットレデンプションなど、経路依存性の強いペイオフ関数の場合は、モンテカルロになる。モンテカルロは最後の手段である。
ファクターを増やすのが容易にできるのが特徴だ。

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