偏微分方程式 (PDE) の陽解法と陰解法:解き方の違い、特徴、精度、安定条件

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簡単にわかりやすく解説

PDEの数値解法は陽解法と陰解法の2つに大きく別れる。

陽解法は、PDEを満期からバックワードに解いていく際に、
ひとつ手前の時点の価値=・・・
の形に直せる方法である。よって逆行列を求める必要がなく、解析的に次の値が出せる。

一方で、陰解法は、
ひとつ手前の時点の価値=・・・
の形に直せない方法である。つまり、連立方程式になっているため、その係数からなる行列の逆行列を求めないと解けない。

こう見ると、一見、陽解法の方が良さそうであり、陰解法は何のためにあるのか、と思うかもしれない。

しかし実務で使うのは必ず陰解法である。
その理由は、

  • 陽解法はかなり細かく時間軸を区切ってあげないと、結果が不安定になる
  • 陰解法にはそのような制約がない
  • 陰解法で求めないといけない逆行列は、もとの行列が三重対角行列なので、効率的に求められる

からである。

陽解法と陰解法は一般化すると同じ形で表現することができて、結局PDEの数値解法は、
・現在の時間グリッドにおける値に、行列を乗じること
を時間グリッドの数だけ繰り返すことと同じである。

このため、求めたい現在における価値は、
・満期におけるペイオフに何らかの行列を何回も掛け続けること
により得られる。

行列を何回も掛け続けるということは、一回の行列演算で生じる離散化誤差が、累積されていく可能性がある、ということだ。

この、何回も掛け続ける行列の固有値について、その絶対値が1より小さければ、誤差が累積していかないことになる。

誤差が累積していかない、という条件を書き換えていくと、結局、
陰解法は常に安定的(無条件安定)だが、
陽解法は厳しい条件(安定条件)をクリアしないと安定的にならない
ということがわかる。

この厳しい条件というのは、
原資産グリッドに比べて、時間軸グリッドをかなり細かく区切らないと、誤差が累積していく
というものである。つまり時間軸の方をひたすら細かく区切ればいいのだが、それでは計算に時間がかかり、なにより効率が悪い。

そういうわけで、陽解法が出てくるのは教科書ぐらいであり、実務では基本的に陰解法しか使わないのである。

陰解法にはいろんなスキームがある。教科書で最初に出てくる陰解法は完全陰解法と呼ばれるもので、実務ではクランクニコルソン法と呼ばれる陰解法や、それを改善したものを使うため、それらについても別の記事で書いていきたい。

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