フォワードスマイルと条件付き確率・推移確率の関係

フォワードスマイルとは、将来時点T1に観測される、オプション満期T2のボラティリティスマイルである。

例えば、今日から1年後に観測される、オプション満期1年のボラティリティスマイルを考える。これはフォワードスマイルであり、今日に観測されるオプション満期2年のボラティリティスマイルとは性質が異なる。確かに、今日から1年後にオプション満期が1年になるということは、今日から見るとオプション満期は2年である。

しかしながら、1年後に観測される、オプション満期1年のボラティリティスマイルは、当然ながら、1年後のマーケットによって変わってくる。このため、フォワードスマイルはこの例では、1年後における原資産価格を所与としたときのボラティリティスマイルを表している。

ボラティリティスマイルから任意のストライクのバニラオプション価格が得られるが、それを用いてバニラオプション価格の1階微分を数値的に計算することができる。バニラオプション価格の1階微分は大まかに言えば原資産の分布関数であり、その満期において原資産がストライクに到達する確率となっている。

ここで、今日観測されるボラティリティスマイルと、モデルで生成される1年後におけるボラティリティスマイルを対比すると、以下の通り。

・今日観測されるボラティリティスマイルから得られる満期2年の分布は、条件なしの確率である。

・1年後におけるボラティリティスマイルから得られる満期1年の分布は、1年後の原資産価格を条件とした条件付き確率である。

2点目の条件付き確率については、言い換えると、1年後に価格がS1だった原資産が、さらにその1年後に各ストライク(K1, K2, …, Kn)に到達する確率である。このような将来から将来への確率を、推移確率や遷移確率(transition probability)と呼ぶ。

以上から、フォワードスマイルは条件付き確率(=推移確率)と関連していることがわかる。バニラオプションのプライシングに必要なのは条件なしの確率だけだが、経路依存商品のプライシングでは条件付き確率(=推移確率)が必要になる。

最もポピュラーな経路依存商品はバリアオプションだろう。バリアオプションのプライシングは、ノックアウトオプションであれば、バリアにヒットしなかった場合の原資産パスからしかペイオフが発生しない。このため、バリアにヒットしなかったという条件付きでバニラオプションをプライシングしないといけない。アップアウトのコール(=リバースノックアウトコール)であれば、満期より手前では原資産があまり上昇しなかったという条件のもとで、満期においてストライクより高くなる確率、つまり条件付き確率がプライシングに必要となる。

フォワードスマイルは、原資産に何らかのモデルを仮定してそこから生成されるが、それはモデルが生成するスマイルのダイナミクスに強く依存する。このため、生成されるフォワードスマイルはモデルによって全く異なってくる。