スワップ評価のイールドカーブにはマルチカーブが浸透している。
それには、
・金利インデックスとテナーごとに異なるフォワードレート、という意味のマルチカーブと、
・担保通貨ごとに異なるディスカウント、という意味のマルチカーブ、
の2つがある。
実は、クレジット商品の評価に用いるハザードレートにもマルチカーブが存在する。
それは、担保通貨ごとに異なる生存確率となる、という意味のマルチカーブだ。
CDSスプレッドのマーケットクォートは、為替スワップポイントや通貨ベーシスと同様、担保通貨ごとに異なるレートが取得できるわけではない。
以前に書いたように、
マーケットクォートのCDSスプレッドは、現在ではアップフロント方式で約定される前提のレートであり、いわゆるコンベンショナルスプレッドというものだ。
満期ごとに、コンベンショナルスプレッドを、フラットなハザードレートを仮定することにより、アップフロントフィーに変換する。
あとは、このアップフロントフィーのカーブを再現するように、ピースワイズコンスタントなハザードレートを逆算する。
ここで、マーケットクォートのコンベンショナルスプレッドは、担保通貨とは関係なく1つのレートしか取れないため、コンベンショナルスプレッドが担保通貨によらないと仮定する。
インプットの金利のディスカウントカーブとして円担保のものを入力して得られるハザードレートを、円担保のハザードレートとして保持する。
同様に、ドル担保のディスカウントカーブをインプットして得られるハザードレートを、ドル担保のハザードレートとして保持する、
といった具合だ。
あとは、この担保通貨ごとに保持しているハザードレートカーブの中から、
保有するクレジット商品の担保通貨に応じて、ハザードレートカーブを選択する。
円担保のCDSには、円担保のハザードレートカーブをインプットすることにより評価する。
それと同じ発行体を参照するCDSであっても、ドル担保のCDS評価には、ドル担保のハザードレートカーブをインプットして評価する。
—–