アジアンオプションのプライシングとモーメントマッチング

アジアンオプションとは、一定期間の原資産の平均値を参照するオプションである。

 
アジアンオプションは教科書のエキゾチックオプションの章でよく出てくるが、実務で出くわすのは、コモディティデリバティブくらいだ。原油価格や金属価格を参照するデリバティブをコモディティデリバティブという。これらコモディティ価格を参照するオプションは、たいていアジアンオプションになっている。
 
ここで問題になるのは、その平均値の計算方法である。幾何平均と算術平均があるが、実務で出くわすのはほとんど算術平均である。つまり原油価格の算術平均を参照するオプションだ。
 
コモディティ価格でも、簡単のためにブラックショールズモデルを使うことは多い。このとき、コモディティ価格は対数正規分布に従う。では、コモディティ価格の算術平均はどのような分布に従うのか?
 
算術平均は足し算なので、対数正規分布を足し合わせたものの分布を知りたいことになるが、これは対数正規分布ではない。
対数正規分布は、正規分布に従う確率変数をXとすると、exp(X)と表される。この和なので、exp(X)+exp(Y)の分布を知りたいのだが、一般にその分布はきれいな分布にはならない。
 
もし仮に幾何平均の分布を知りたいのであれば、幾何平均はかけ算なので、exp(X)exp(Y)の分布を知りたいことになる。これはexp(X+Y)と同じであり、正規分布の再生性から、X+Yも正規分布である。よってかけ算したものもまた、対数正規分布に従うことがわかる。
 
つまり幾何平均の分布はわかるが、算術平均の分布はわからない。しかしプライシングしたいのは算術平均の方だ、ということである。
 
そこで実務では、厳密な解析解ではなく、近似解法を用いる。いくつか方法があるが、一般的なのは、モーメントマッチングである。
 
ポイントは、
算術平均の真の分布はわからないが、算術平均の真の平均と真の分散は求めることができる、
という点だ。
 
モーメントマッチングでは、算術平均の分布を、その平均と分散を持つ対数正規分布で近似する。
こうすることにより、分布全体が合っているわけではないものの、平均と分散は合っていることになる。
あとは、算術平均が対数正規分布に従うと思ってブラック式でプライシングする。ブラック式にインプットするフォワードとボラティリティに、算術平均の真のフォワードと、真のボラティリティをインプットすればよい。

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