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CVAとは

CVAはCredit Valuation Adjustmentの略で、デリバティブの取引相手(カウンターパーティ)の信用リスクによる期待損失のことである。

最近では日系金融機関の間でも会計の時価算定基準が改正されることに伴い、CVAを会計上導入する会社が急速に増えているようだ。

カウンターパーティの信用リスクがないものとして、OISディスカウントで求めた通常の時価をリスクフリー時価と言う。このリスクフリー時価からCVAを差し引いたものが公正価値になる

公正価値=リスクフリー時価-CVA

(実際は他にも、総括してXVAと呼ばれる色々な評価調整があり、それらも含めて足し引きしたものが公正価値となる)。

逆に言えば、
CVA=リスクフリー時価-信用リスク込みの時価
となり、リスクフリー時価から、相手の信用リスクを考慮して出した低めの時価を差し引いたものとなる。

フロントデスクのトレードではこのCVAの分だけ顧客にとって不利なプライスが提示される。しかしそのプライスのうちいくらがCVAで、いくらがFVAで、いくらがヘッジコストで、いくらがその他手数料で、、、、というような要因分解は、顧客からは見えない。

CVAはローンで言うところの引当金に対応する

公正価値=リスクフリー時価-CVA

という式からもわかる通り、CVAはローンに対する引当金のデリバティブ版と考えればよい。
ローンに対する引当金とは、お金を貸した相手(=カウンターパーティ)のクレジットリスクに応じて、期待損失額に見合う金額を事前に積んでおくものである。

ローンの引当金考慮後の価値=ローンの額面-引当金

同じ取引先に対して、ローンと金利スワップをやっているとしよう。その取引先のクレジットリスクに応じて、ローンは引当金の分だけ価値が下がる。
・ローン元本が10億円で引当金が3億円なら、ローン価値は7億円
・金利スワップ勝ちポジションが10億円でCVAが3億円なら、デリバティブ価値は7億円
ということになる。

ノベーションと逆選択

上記の例では、CVAを考慮するとデリバティブ価値がCVA3億円の分だけ安くなる。評価上CVAを考慮していない金融機関にとっては、デリバティブ価値は10億円あるので、評価上CVAを考慮している金融機関から7億円でデリバティブを買ってきて、自社としてはCVAを考慮しないで評価すると、10億円の価値が出る。したがってCVA3億円の分だけ利益が出る、というわけである。

顧客Aと金融機関Bの間で行っていたデリバティブ取引を、
顧客Aと金融機関Cの間で行うよう変更することを、ノベーションという。
いまの場合、評価上CVAを考慮している金融機関Bから、評価上CVAを考慮していない金融機関Cにデリバティブを譲渡する。金融機関Bにとって7億円の勝ちポジションになっているので、金融機関Cは金融機関Bに7億円を支払う。しかし金融機関Cは自社の評価ではCVAを考慮していないので10億円の価値があることになり、差額の3億円がもうかってしまう。

数年前の日系銀行はまさにこういう状態になっていた。このように、CVAを考慮する会社と考慮しない会社が混在していた場合、クレジットリスクの高い顧客とのデリバティブは、CVAを考慮しない会社に集中することになる。なぜならCVAを考慮しない分だけ、顧客にとって有利な条件を提示できるので、CVAを考慮している他社との価格競争に勝ててしまうからだ。クレジットリスクの高い危険な取引が、CVAを考慮していない金融機関に集中してしまうことを指して、逆選択と言うことがある。

しかしCVA3億円の意味は、デリバティブ取引先のデフォルトによって平均的には3億円の損失が出る、ということである。もし実際にデフォルトが発生してCVA通りの損失が出た場合、10億円の価値があるとして財務上報告していたものが、実際には7億円の価値しかなかったということで、CVA3億円に対応する損失が突然計上される。投資家にとってこれはサプライズであり望ましいとはいえない。

カウンターパーティリスクとは

カウンターパーティ (Counterparty) とは取引相手のことである。
例えば金融機関が事業会社と金利スワップを行う場合、

  • 金融機関にとってのカウンターパーティは事業会社
  • 事業会社にとってのカウンターパーティは金融機関

ということになる。

カウンターパーティリスクとは、カウンターパーティがデフォルト(倒産)することによって損失を被るリスクのことである。(クレジット界隈ではデフォルトや倒産の定義が重要となるが、ここではその詳細には立ち入らない。)信用リスクの一種とみることもできるので、カウンターパーティクレジットリスク (Counterparty Credit Risk: CCR) とも呼ぶ。

カウンターパーティがデフォルトするとどのような損失があるかについて軽く説明しておく。
まず、デリバティブの時価は市場変動によってプラス(勝ちポジション)になったりマイナス(負けポジション)になったりする。

自社がデリバティブの勝ちポジションの状態でカウンターパーティがデフォルトすると、その勝ち分(の一部)を回収できなくなってしまう。この回収できなかった勝ちポジションが損失だというわけである。

逆に相手の立場から見れば、そのときカウンターパーティは負けポジションなので、その状態でデフォルトすれば、負け分(の一部)を踏み倒せる、ということになる。

以下では特にことわらない限り、取引に担保は付いていないこと(無担保取引)を前提に話を進める。担保付き取引(有担保取引)の場合についてはそれ専用の章を設けて別途説明する。

次に、取引相手が倒産するとどのように損失が生じるのかを見ていく。

ローン(貸出金)の場合

デリバティブと対比するために、ローンのクレジットリスクについて簡単に復習しておく。
ローンや債券などの現物商品の場合はあまり「カウンターパーティリスク」という言い方はせず、通常の「クレジットリスク」と一体化している。

ローンでは、借り手にお金を貸して、満期になったら返してもらう。貸し手にとっては借り手がカウンターパーティである。しかし満期が到来する前に借り手がデフォルトしたら、貸したお金は返ってこない。貸したお金の一部を回収できるかもしれないが、残りは貸し倒れ損失になる。

このように、「満期になったら契約通り、元本を返済する」という義務をカウンターパーティが履行してくれないリスクがある。これがローンのカウンターパーティリスクに対応する。

重要なこととして、ローンの場合は、返してもらえない可能性がある金額(カウンターパーティリスクを負っている金額)は、マーケットがいくら変動しようが、(満期一括返済であれば)満期まで一定ということである。この点がデリバティブとは大きく異なる。

デリバティブの場合

まず、デリバティブの時価は市場変動によってプラス(勝ちポジション)になったりマイナス(負けポジション)になったりする。

  • 時価がプラスというのは、ざっくり言うと含み益(未実現利益)
  • 時価がマイナスというのは、ざっくり言うと含み損(未実現損失)

自社がデリバティブの勝ちポジションの状態でカウンターパーティがデフォルトすると、その含み益(の一部)を回収できなくなってしまう。この回収できなかった含み益が損失だというわけである。

そういう意味では、デリバティブの含み益があるということは、カウンターパーティに対してお金を貸しているようなもの、と見ることができる。これに対する引当金のようなものがCVAである。

なぜ勝ちポジションが貸出(与信)に対応するのか

(自社が勝ちポジション、すなわち含み益が出ている)
=(その含み益の金額だけお金を貸している)

上記がなぜ=(イコール)なのか、という点について、補足説明する。

金利スワップの利払頻度が半年、満期が5年後で、含み益が1,000万円出ているとしよう。この含み益が意味するのは「満期までの5年間で、受け取るキャッシュフローの時価の方が、支払うキャッシュフローの時価よりも、1,000万円多い」ということである。

ここで時価というのはざっくり言うと、期待値を現在価値に割り引いたものである。あくまで期待値なので、平均的にこれくらい受け取る・支払う、という意味であり、実際にその時価と同じ金額の受け取り・支払いが発生するわけではない。含み益と実現益は別物、ということである。

半年が経過して利払いのタイミングが来ると、固定と変動の金利を交換する。このとき、

以前に含みが出ていた
→ 傾向としては、受け取る金額の方が支払う金額よりも大きくなりやすい

ということなので、傾向としては、受け払いを相殺すると、実質的には受け取りになり、その分だけもうかる。このように、時間が経過すると、実際に受け払いの金額が確定し、含み益は実現益になることでマネタイズされる。

含み益が出ているということは、自分にとって有利な方向にマーケットが傾いているわけなので、実現損よりも実現益になる可能性の方が高い。実現益になるとはつまり、受け取りの方が支払いより多くなるということである。すなわち、平均的には含み益の金額だけ受け取れることになる。これは今すぐに受け取れるお金ではなく、「将来に」受け取れる「可能性がある」金額である。以上から、デリバティブの勝ちポジションの状態は、カウンターパーティにお金を貸している状態とみなせる、ということがわかるだろう。

ただし、既に述べたように、含み益と実現益は別物であり、その金額は異なる。含み益が1,000万円出ていても、実現益は500万円にしかならなかった、というようなことは普通にあり得る。さらに重要なこととして、含み益が出ていたのに、その後キャッシュフローが確定するまでにマーケットが不利な方向に動いて、実現益ではなく実現損になってしまう、ということも普通にあり得る。時価はあくまで期待値なので、平均的には得になりそう・平均的には損になりそう、という話にすぎない。

ローンの引当金とデリバティブのCVAの違い

ローンで貸している元本は変動しないが、デリバティブの勝ちポジションはマーケットの動きに合わせて毎営業日変動する。これはつまり、デリバティブのエクスポージャー(EAD)は市場変動によって常に動いていることを意味する。

また、デフォルト確率(PD)についても、ローンではヒストリカルの貸倒れ率などをもとに求め、引当金はせいぜい四半期に一回程度見直すくらいだろう。しかしCVAではマーケットのCDSスプレッドから求めるので、毎日変動することになる。

したがって、CVAは毎営業日異なる値が計算され、常に変動している。これはPLの変動要因になるため、リスクを相殺する方向のデリバティブ取引を行うことで、CVAの変動をヘッジする必要がある。エクスポージャー部分のヘッジは、例えば金利リスクをヘッジするなら金利スワップをトレードする。デフォルト確率部分のヘッジは、CDSをトレードすることで行う。

バーゼルIIIのCVAリスク資本

バーゼル規制ではCVAの変動によって金融機関の損益が大きく変化するリスクに対して、資本を積むよう求められている。これをCVAリスク資本という。
ざっくり言うと、CVAのVaR(バリューアットリスク)を求めることになる。

現行の規制ではCVAリスク資本の測定方法には2つあり、

  • 先進的リスク測定方式
  • 標準的リスク測定方式

である。
先進的方式は内部モデルの当局承認が必要となる。

現行の規制は次のような問題点を指摘されている。

  • クレジット以外の市場要因(金利や為替など)によるCVA変動が考慮されない
  • 会計CVAと規制CVAで求め方が違うという不整合
  • 実務で行われているCVAヘッジの一部が規制上考慮されない

これらの問題を踏まえ、CVAリスク資本の見直しが予定されている。
将来的に測定方法が3つに分かれる。

  • 標準的方式(SA-CVA)
  • 基礎的方式(BA-CVA)
  • 簡便法

標準的方式(SA-CVA)

標準的方式(SA-CVA)では、市場リスク資本の新たな規制であるFRTBの標準的方式と同様の方法でCVAのVaRを求める。
計算としてはざっくりいうと、CVAの感応度をインプットとして与えて、規制当局が求めた掛け目(リスクウェイト)を乗じて合計する、というような計算になる。

金融機関としては、様々なCVAインプットに対する、CVAの感応度を求めないといけない。
CVA自体の計算が複雑なのに、そのCVAの感応度を求める必要があり、計算負荷が高い。
計算が複雑なので当局承認が必要となる。
その代わり、SA-CVAではカウンターパーティクレジットのヘッジに加えて、その他のマーケットリスクのヘッジ効果も考慮できる。

用いる感応度はデルタとベガである。デルタは原資産価格に対する感応度、ベガは原資産価格ボラティリティに対する感応度である。
アセットクラスの数だけ異なる種類のデルタがあるが、SA-CVAで対象となるのは以下の通り。

  • カウンターパーティのクレジットスプレッド
  • 金利
  • 為替レート
  • CDSなどで参照している発行体のクレジットスプレッド
  • コモディティ価格
  • 株価

感応度に乗じるリスクウェイトは、当局が事前に求めて公表される値を用いる。リスクウェイトのイメージとしては、各リスクファクターの変動幅や変動率の大きさを表している。

最後に感応度とリスクウェイトの積を合計するが、その際、同一リスクタイプ内での相関は考慮されるが、異なるリスクタイプ間の相関は考慮されない。

基礎的方式(BA-CVA)

基礎的方式(BA-CVA)では、現行の標準的リスク測定方式をベースに改良したものである。CVAリスク資本とは別に、CCR資本(カウンターパーティクレジットリスク資本)という資本も積まないといけないが、基礎的方式ではこのCCR資本の計算に用いるEAD(Exposure At Default)や実行マチュリティというパラメーターを再利用して、CVAリスク資本を求める。
当局承認は不要。
カウンターパーティクレジットのヘッジ効果は考慮されるが、その他のマーケットリスクのヘッジ効果は考慮されない。実際にはヘッジでCVAリスクが削減されていたとしても、規制上はその分に対しても資本を積まないといけない。

簡便法

簡便法は、CVAリスクの規模が小さい銀行向けに設けられている。CCPで清算されていない店頭デリバティブの元本合計が1,000億ユーロ以下の銀行のみが対象となっている。

CCRと同水準の資本を積むことが求められてしまうほか、CVAヘッジ効果は考慮されない。CVAリスク資本の額が必要以上に大きくなってしまうだろう。

CVA導入のメリット・デメリット

メリット

  • カウンターパーティのデフォルトによる期待損失の変化を把握できる
  • マーケットメイカーが出してくる市場実勢のプライス(CVAが考慮されている)と整合的な時価評価になる
  • 必要以上に大きなカウンターパーティリスクを引き受けてしまう可能性が下がる
  • バーゼル規制におけるCVAリスク資本の標準的方式 (SA-CVA) の計算と整合的
  • 会計CVAがマーケットメイカーのフロントプライシングCVAと整合的になり、規制資本とも整合的になる

デメリット

  • CVAリスク管理体制を構築しないといけない
  • 市場慣行になっているCVA計算方法につき理解を深め、適切にモニタリング、ヘッジできるCVAトレーダーなどの人材を集めないといけない
  • 担保契約など新たなデータベース、システム間のインターフェースの構築が必要になる
  • 計算が複雑なので自社で開発できない場合はパッケージシステムの導入が必要
  • 計算負荷が重いのでハードウェア投資が必要になることもある

日系金融機関がCVA導入時によく直面する課題

次のような問題が考えられる。

  • CDSが少ない・流動性が低い問題
  • CVAヘッジしてもベーシスリスクが残る問題
  • CVAリスク管理をどうするか問題
  • 会計CVAと規制CVAの不整合問題

CDS市場の流動性が低いことにより、CDSから計算したデフォルト確率でCVAを計算することが困難になることが多い。そもそもCDSが市場でトレードされていないカウンターパーティも多い。
CDSが利用できない場合は、取得できるCDSを集計して人工的なCDSスプレッドを求め、プロキシースプレッドとして利用する、ということが一般的となっている。

CVAはCDSスプレッドの変動や、金利・為替などの変動によって値が変動する。ローンの引当金は市場変動しないのと対照的である。このようにCVA自体が変動することで決算が大きくぶれてしまうのを避けるために、CVA変動リスクをヘッジする必要が出てくる。

CVAヘッジには、クレジットのヘッジと、クレジット以外(金利・為替など)のヘッジに分かれる。クレジットのヘッジは、カウンターパーティのCVAに関連んするCDSをトレードすることでCDSスプレッド変動によるCVAリスクをある程度ヘッジできる。しかしCVA計算に用いるシングルネームCDSが市場で取引されていない場合、実際のCVA計算にはプロキシースプレッドが用いられており、CVAヘッジはシングルネームCDSの代わりにインデックスCDSを用いることになる。しかしプロキシースプレッドとインデックスCDSスプレッドは動き方が異なるので、ヘッジ取引を行っても、クレジット由来のCVA変動を完全に相殺することはできない。結果的に、プロキシースプレッドとインデックスCDSスプレッドの間のベーシスリスクにさらされることになる。

CVAがマーケットリスクにさらされるため、CVAリスク管理の体制をどう構築するかが問題となる。CVAデスクを設置することになるが、前例のないデスクを立ち上げるにあたり実務的な課題が生じてくる。
CVAデスクをフロント、フロントミドル、ミドルのどの階層に位置付けるのが適切か、組織的な観点での検討が必要になる。
CVAデスクは自己の判断で個別企業のクレジット市場取引を行うが、従来の政策投資部署のくくりには含まれないので、その位置づけの整理が求められる。
CVAデスクはCVAが大きくなりそうなカウンターパーティとの個別案件の情報を営業部門経由で手に入ることがある。したがって、インサイダー取引規制などにより、CVAデスクによるヘッジ取引が制限される可能性もある。

会計CVAと規制CVAの不整合については、会計CVAでは自社のクレジットリスクに対応するDVAも考慮することが多いが、規制CVAではDVAは考慮されない。

CVA導入が遅れていたその他の理由

CVAが日系金融機関で今まで導入されてこなかったのには他にも理由がある。

  • 顧客から見て価格が悪くなる
  • デリバティブビジネスとして追加的に利益が増えるわけではない
  • 計算負荷が大きすぎる

一点目については、金融機関自身よりも顧客の信用格付けが低いことが多く、DVA(銀行の利益)よりCVA(銀行の損失)が大きくなるため、金融機関にとってのコストであるCVAが顧客への価格に転嫁されてしまう。結果的に、顧客から見ると金融機関から呈示される価格が悪くなるため、他の金融機関に案件を取られるのでは、という営業部門からの批判が社内で巻き起こりがちである。

二点目については、CVAを導入することで追加的な収益獲得の機会が増えるわけではない。CVAを導入するという市場慣行にキャッチアップすることが目的であり、収益向上が目的ではない、となると社内的に承認を得るのが困難になることが多い

三点目については、CVAは取引1件ごとに計算されるものではなく、特定の顧客と行っている取引全て(ポートフォリオ)に対してCVAが1つ計算される。このようにCVAはVaRなどと同様、ポートフォリオに対して計算を行うため、計算負荷が重くなる
加えて、CVAはポートフォリオの評価に必要な市場変数を全てシミュレーションするため、ハードウェアを増強しないと計算時間がかかってしまう。計算負荷の重さ、及び計算方法の複雑さから、自社でCVAシステムを開発するのはあきらめ、ベンダーのパッケージシステムを購入する、という選択をとる会社も多い。

追加的な収益が得られるわけではなく、むしろ顧客目線での価格が悪くなって案件が取れなくなる恐れがあり、さらにシステム投資が必要となると、なかなか導入が進まなくなるのは想像に難くない。

デリバティブのDVAとは

デリバティブ時価は貸出金と異なり、市場変動によって時価がマイナスになり得る。金融機関にとって時価がプラスの場合は、金融機関の取引相手がデフォルトすると金融機関に損失が出る。

それとは逆に、金融機関にとって時価がマイナスの場合、金融機関自身がデフォルトすると金融機関にとって金銭的メリットがある。すなわち、時価がマイナスということは借金をしているわけだが、金融機関自身がデフォルトすると、その借金(の一部)を返済しなくてよくなる(踏み倒せる)。この金銭的メリットが期待値としていくらになるかを求めたものがDVA (Debt Value Adjustment) である。

CVAは損失だがDVAは利益なので方向が逆になることに注意。
CVAとDVAを相殺したものをBilateral CVA(双方向CVA)と呼ぶ。
例えばCVAがマイナス100億円、DVAがプラスの60億円であれば、Bilateral CVAはマイナス40億円となる。

DVAはCVAと同じ方法で、CVAと同時に計算できる。
CVAの計算が終わったらそれと同時にDVAの計算結果も出ている。

CVA計算式を構成する3要素

期待損失というのは、損失の期待値ということだが、それはざっくり以下の3つの要素に分解できる。

CVA=EAD x PD x LGD
(1)EAD (Exposure At Default)
(2)PD (Probability of Default)
(3)LGD (Loss Given Defaullt)

(1)はエクスポージャーとも呼ばれるが、勝ちポジションの期待値である。
(2)はデフォルト確率、(3)は損失率である。

この3つの要素に分解するのは、例えばローンの貸し倒れ引当金の考え方と同じである。しかしローンと異なるのは、デリバティブでは貸している金額が市場変動によって毎日変わる、ということである

貸している金額というのは、勝ちポジションの金額だが、
・市場が自社に有利な方向に動けばその金額は増えるし、
・それとは逆の方向に動けばその金額は減る。

貸している金額というのは(1)のEADに対応するが、これが一定ではないので、期待値を求めないといけない。この期待値を求めるところが最も難しいところであり、(1)から(3)の中で(1)のEADを求めるのが一番手間がかかる。

(2)のPDはCDSから逆算して求める。

(3)のLGDは、基本的には(2)で参照したCDSのマーケットクォートが前提としている回収率を用いて、(1-回収率)として求める。

CVAの計算方法

CVAの計算手順を分解すると以下の通り。

(1)準備(キャリブレーション)
 (1-1)イールドカーブを作成する
 (1-2)プロキシースプレッドを求める
 (1-3)デフォルト確率を求める
 (1-4)モデルをキャリブレーションする

(2)計算(シミュレーション)

 (2-1)モデルでシナリオを作成する
 (2-2)取引ごとに将来時点における時価を求める

(3)集計(アグリゲーション)

 (3-1)ネッティングする
 (3-2)担保勘定残高の経路を求める
 (3-3)エクスポージャーを求める
 (3-4)CVAを求める

ステップ1:キャリブレーション

ステップ1は、計算基準日のマーケットにモデルをキャリブレーションする。モデルがマーケットデータにフィットするように、モデルのパラメーターを設定する。これはCVAなどのXVAに固有の話ではなく、単一取引をプライシングする際と同じである。

(1-1)イールドカーブを求める
では、市場で観測されるスワップレートなどから、ディスカウントファクターを逆算する。

(1-2)プロキシースプレッドを求める
では、CDSを市場で観測できないカウンターパーティに用いるクレジットスプレッドを回帰分析により求める。

(1-3)デフォルト確率を求める
では、クレジットスプレッドから、カウンターパーティのデフォルト確率を逆算する。

(1-4)モデルをキャリブレーションする
では、金利や為替などのアセットクラスごとに、シナリオ生成に使うモデルをマーケットのボラティリティにフィットさせて、モデルパラメーターを設定する。

ステップ2:シミュレーション

ステップ2はモンテカルロシミュレーションである。

特定のカウンターパーティと行っている取引ポートフォリオについて、そこに含まれる全ての金利や為替を含んだハイブリッドモデルを使い、マーケットの将来シナリオを作成し、各シナリオのもとで各取引の将来時価を求める。

ここまで終わると、将来時価が、

・取引
・シナリオ
・時点グリッド

の3次元で求まることになる。

ステップ3:将来時価の集計

ステップ3は、

・取引
・シナリオ
・時点グリッド

の3次元で求まった将来時価を集計するフェーズである。

(3-1)ネッティングする
(3-2)担保勘定残高の経路を求める
(3-3)エクスポージャーを求める
(3-4)CVAを求める

ここでは簡単に概要だけ述べておく。

手順(3-1)では、取引間で時価をネッティングする。これでシナリオ、時点グリッド、ごとにネッティング後の時価が求まる。

手順(3-2)では、カウンターパーティが有担保先の場合は、ネッティング後の時価の経路をもとに、担保勘定残高の経路を求める。この際、担保契約(CSA契約)の条件を考慮する。

手順(3-3)では、エクスポージャーを求める。カウンターパーティが無担保先の場合は、ネッティング後の時価のプラスパートを取ればエクスポージャーとなる。

Exposure(t) = max{ NPV(t), 0.0 }

有担保先の場合は、ネッティング後の時価から担保勘定残高を引いた残りのプラスパートをとる。

Exposure(t) = max{ NPV(t) – Collateral(t – δt), 0.0 }

ここでδtはMPoR (Margin Period of Risk、マージンピリオド)である。有担保先の場合は、MPoRだけさかのぼった時点で担保残高の更新がストップしていることに注意。

手順(3-4)では仕上げとして、CVAを求める。

・パスごとにExposureを割り引いて、PDをかけて、平均をとる
・各時点のExposure × PDを合計する
・最後にLGD(フラットな定数)をかける

クレジットをシミュレーションせず、確定的と仮定している場合は、PDはパスによらず同じ値なので、割引後Exposureの平均に外からPDをかければよい。

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