CDSの取引条件の決め方には2つの方式があり、現在はアップフロント方式が主流であることを前回書いた。
今回はそれとは少し異なる切り口の話であり、CDSの価格を市場で提示する方式の話である。
マーケットクォートの方式には大きく分けて3つある。
⑴Par Spread方式、あるいはRunning Spreadなどとも呼ぶ
⑵Upfront Fee方式
⑶Conventional Spread方式、あるいはQuoted Spreadなどとも呼ぶ
取引条件の決め方がスプレッド方式の場合は、
市場価格のクォート方式は、⑴のパースプレッドしかない。
昔はこの方法しかなかったため、教科書ではたいていこの方法が書いてある。
これは、取引開始時の時価がゼロになるようなクーポンレートを提示する方法である。
しかしながら、取引条件の決め方が、現在主流のアップフロント方式の場合は、市場価格のクォート方式が2つに分かれる。
それが⑵のアップフロントフィーと、⑶のコンベンショナルスプレッドである。
取引条件の決め方がアップフロント方式の場合は、契約上のクーポンレートはあらかじめ決まっているため、市場実勢とは関係なく決まり、動かしようがない。
⑵は、アップフロントフィーを元本に対するパーセントで提示するクォート方式だ。
クレジット市場が動くと、市場実勢のプロテクションLegの時価が動くので、それにより生じるCDSの時価をアップフロントフィーとして受け払いする。
⑶は、⑵のアップフロントフィーを再現するように固定クーポンレートを調整して、求まったクーポンレートでクォートする方式だ。
そう言われると、この⑶のConventional Spreadと⑴のPar Spreadには何の違いがあるのか、と思うかもしれない。
違うのは、ハザードレートの関数形をフラットと仮定するか、ピースワイズコンスタントと仮定するかの違いである。
⑶のConventional Spreadの計算では、クーポンレートを調整するとき、ハザードレートは時点によらずフラットと仮定する。
⑴のパースプレッドからハザードレートを逆算するときは、ハザードレートがフラットではなく、ピースワイズコンスタントだと仮定する。
このように、クォートの仕方によってハザードレートの関数形に対する仮定が異なることに注意が必要だ。
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