トランチドCLOのプライシング: 2つのアプローチ

CDSと同様、プレミアムLegとプロテクションLegの差分で時価が求まる。

 
元本の毀損は、原資産のローンポートフォリオの累積損失額に依存して決まる。
トランシェにはアタッチメントポイントとデタッチメントポイントがあり、
累積損失額がアタッチメントポイントを超えると、超えた分だけ元本に損失が出る。
しかしデタッチメントポイントを超えると、それ以上は元本に損失は出ない。
したがってペイオフのグラフはすべり台型になるが、これはつまりコールスプレッドと同じ形である。

 

 
プレミアムLegは、残存元本に対するクーポンの現在価値で求まる。
残存元本は、当初元本から当該トランシェの損失額を引いたものである。
トランシェの損失額は確率的に決まるため、その期待値を求めないといけない。
 
プロテクションLegは、各期間の期待損失額の現在価値で求まる。
よってこちらも、トランシェの損失額の期待値を求めないといけない。
 
結局のところ、トランシェの期待損失額さえ求まればよい、ということになる。
トランシェの損失額は、ローンポートフォリオの累積損失額によって決まるため、計算に必要なのは以下の3点である。
 
⑴各借り手の累積デフォルト確率
⑵各借り手のデフォルト時損失額
⑶各借り手の間のデフォルト相関
 
⑴と⑵はあらかじめ別途求めておき、外から与える。
問題は⑶のデフォルト相関である。
デフォルト相関のモデリングは多数あるが、よく実務で出てくるアプローチは2種類である。
 
1、ワンファクターに単純化して、一次元の数値積分で求める
2、ファクターを減らさずにフルの相関行列を与えて、モンテカルロ法で求める
 
1、はマクロ要因を所与としたときに、各借り手のデフォルト確率が条件付独立である、と仮定する。
ガウシアンコピュラの相関行列の要素は、異なるどの組をとっても同じ相関係数、と仮定する。
 
1、のメリットは、
・かなりの部分まで解析的に解けるため、感応度を求めるのも容易
・インデックス物や、近似的にインデックスとみなせるような大規模ポートフォリオに対しては、市場価格と整合的に出せる
 
1、のデメリットは、
・小規模なbespoke物やFirstToDefaultなど、市場価格の取得が困難なものや、トランチドインデックスの相関構造を使えないものは、適切にプライシングできない
 
2、のメリットは、
・全構成銘柄の相関行列を反映できる
・任意のローンポートフォリオに対して一般的に適用できる
 
2のデメリットは、
・相関行列の設定方法に自由度がありすぎて、恣意性あり
・シミュレーションでしか求まらないため、大規模ポートフォリオだと計算負荷が重く、感応度は求めるのが大変。
 

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