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EB債については以下の記事を参照。
【仕組債の仕組みとカラクリ】EB債(他社株転換社債)とは | Quant College
ざっくり解説
バスケット型のEB債(複数株式参照型他社株転換可能債)は、その名の通り、複数銘柄の株価に依存して
- クーポン
- 早期償還
- 満期の元本償還
のキャッシュフローが決まる仕組債である。
バスケット型のEB債にもいくつか種類があるが、市場に出回っているのはほとんどがワーストパフォーマンス銘柄を参照するタイプだ。そのようなオプションをWorstOfオプションと呼ぶことがある。
ワーストパフォーマンス銘柄を参照すると投資家にとって不利になるため、その分だけ高いクーポンをもらえることになる。
EB債と同様、バスケットEB債も
・アップサイドにノックアウトバリア
・ダウンサイドにノックインバリア
が付いている。ノックアウトバリアは離散参照、ノックインバリアは連続参照である。
連続バリアと離散バリアとContinuity Correction | Quant College
バスケット型の特徴
以下ではワーストパフォーマンス銘柄参照型の場合について見ていく。
クーポンについて
例えば、クーポンは以下のように決まる。
- 参照銘柄の株価全てが行使価格を上回っていたら5.0%もらえる
- 参照銘柄の株価のうち少なくとも1つが行使価格を下回っていたら0.1%しかもらえない
参照株式が3銘柄あれば、3銘柄とも株価が行使価格を上回らないと、高いクーポンがもらえない。行使価格は組成時の当初株価をもとに設定されるので、組成時からの株価パフォーマンスが最も低い銘柄に応じてクーポンが決まっていることになる。すなわち、株価パフォーマンスが最も低い銘柄が行使価格を上回っていれば、他の銘柄も上回っているので、高いクーポンがもらえることになる。
ここで、株価パフォーマンスとは、組成時の当初株価に対する割合で見る。具体的には以下で求める。
(株価パフォーマンス)=(観測された株価)÷(組成時の当初株価)
早期償還について
たいてい早期償還条項(ノックアウト条項)がついている。よくあるのは例えば
- 参照銘柄の株価を利払いと同じ頻度で観測し、参照株価の全てがノックアウト価格を上回ったら額面の現金で早期償還される
ノックアウト価格も組成時の当初株価をもとに設定されるので、組成時からの株価パフォーマンスが最も低い銘柄がノックアウト価格を上回ったら、早期償還されることになる。
株価の参照頻度は、ザラ場も含めて常に観測するのではなく、利払いが3か月ごとであれば3か月に1回だけ観測する。しかし参照株式が3銘柄あったとしても、それらのうち1つでもノックアウト価格にヒットしたら早期償還されてしまう。その後はクーポンがもらえないので投資家は再投資リスクを負っている。
満期の元本償還について
満期まで早期償還(ノックアウト)しなかった場合に限り、以下の元本償還が満期に行われる。
満期の元本償還については、ノックイン条項がついている。よくあるのは例えば、
- 参照銘柄の株価をザラ場も含めて毎営業日観測し、参照株価のうち少なくとも1つがノックイン価格を下回ったらノックインする
というものである。
満期の元本償還は、EB債と同様、
・フォワード償還タイプ
・プット償還タイプ
の2種類がある。
それぞれについて場合わけすると、満期の元本償還は以下の通り。
- 一度もノックインしなかった場合、額面の現金で償還される
- 一度でもノックインした場合、
- フォワード償還タイプであれば、問答無用でワーストパフォーマンス銘柄の現物株で償還される
- プット償還タイプであれば、
- 満期におけるワーストパフォーマンスの株価が行使価格を下回っていれば、そのワーストパフォーマンス銘柄の現物株で償還される
- 満期におけるワーストパフォーマンス銘柄の株価が行使価格を上回っていれば、額面の現金で償還される
ワーストパフォーマンス銘柄はつまり、株価の下げ方が最もひどい銘柄なので、その株式で償還されてしまうわけだから、投資家としてはたまったものではない。
もちろん、単一銘柄参照型EB債と同様、ワーストパフォーマンス銘柄の株式を受け取るだけなので、その段階で損失が確定するわけではない。その後、株価が回復しないまま現物株を市場で売却すると損失を被ることになる。
また、満期に渡される現物株の株式数は、額面の金額を行使価格で割って求める。ただし株式には銘柄ごとに単元株(それより小さい単位で売買できない)が決まっているので、単元株未満の部分は現金調整額としてキャッシュで支払われる。
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