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モンテカルロ法(モンテカルロシミュレーション)とは
モンテカルロ法(モンテカルロ・シミュレーション)とは、特定の確率分布に従う乱数を用いて、複雑な分布における関数の期待値を近似的に求める方法である。
モンテカルロ法は一般には乱数を用いた数値計算法の全体を指すこともあるが、実際に応用する場合は、「関数の期待値」を求めるのに使うことが多い。
関数の期待値とは、次のような形をしている。
\(\mathbb{E}\left[ f(X) \right]\)
\(f\)が関数、\(X\)が関数に与える確率変数、\(\mathbb{E}[ ]\)が期待値を表す。
期待値は、
- 確率変数\(X\)が一次元で、
- かつ、確率変数\(X\)がシンプルな分布に従っていて、
- かつ、関数\(f\)がシンプルな形をしている
という場合は、解析的に求めることができるので、モンテカルロ法は必要ない。
しかし現実の問題はそうシンプルではなく、
- 確率変数\(X\)の次元数が多くて(変数の数が多くて)、
- または、確率変数\(X\)が複雑な分布(名前が付いてないような分布)に従っていて、
- または、関数\(f\)が複雑な形をしている
という場合が多い。これらのケースで、期待値を求めるのに、モンテカルロシミュレーションを用いる。
2点目については、複雑な分布とは言っても、現実の問題に応用されている分布は、シンプルな分布の組み合わせでできていることがほとんどである。シンプルな分布をいくつか組み合わせるだけでも、出来上がりの分布は複雑なものになり、シンプルな数式では表せないことが多い。数式では表せなくても、シンプルな分布の組み合わせであれば、最終的に確率分布を求めたい変数のサンプルを抽出することはできる。部品のひとつひとつに対応する乱数を発生させ、それを組み合わせればいいからだ。
モンテカルロ法のやり方
モンテカルロシミュレーションの手順は、以下の通り。
- シンプルな確率分布に従う乱数を多数、発生させる
- その乱数を使い、将来のシナリオを多数、発生させる
- 各シナリオのもとで、関数の計算結果を出す
- 各シナリオのもとで求めた関数の結果について、平均をとる
モンテカルロ法の利点は
モンテカルロ法の利点は以下の通り。
- 複雑なペイオフを持つ商品を評価できる
- 複数の原資産価格に依存する商品の評価に容易に拡張できる
- 複雑な確率分布を生成するような、複雑なモデルで商品を評価できる
- ファクター数の多いモデルで商品を評価できる
とにかく「拡張性が高い」ということにつきる。
モンテカルロ法の欠点は
モンテカルロ法の欠点は以下の通り。
- 計算が遅い。時間がかかる
- 高い精度で期待値を求めるには、シナリオ数や離散化のグリッド数をかなり増やす必要がある
- 離散化の方法によっては誤差が大きくなる
とにかく「効率が悪い」ということにつきる。
金融実務ではどういうときに使うのか
金融実務ではどういうときにモンテカルロ法を使うかというと、「最後の手段」という位置づけである。すなわち他の手段、たとえば解析解、ツリー、FDM(偏微分方程式の数値解法)、などが全て使えない、あるいは使うのには適していない、となった場合に、最後の手段として使うことになる。
具体的には以下のような場合である。
- 複数の株価に依存するバスケットオートコーラブル商品をLocal Volatilityモデルなどで評価するとき
- 為替レートの履歴に依存するターゲットノックアウト商品(FX TARFなど)をLocal Volatilityモデルなどで評価するとき
- 複数の為替レートに依存するチューザー商品をLocal Volatilityモデルなどで評価するとき
- 大量の原資産価格に依存するポートフォリオのXVAをハイブリッドモデルで評価するとき
実務ではモンテカルロ法はできる限り使わないで済ませたいが、やむを得ず使わざるを得ない場合に限って使う、という位置づけである。
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