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解説
今まではテナーベーシスといえば、Liborのテナーベーシスであった。つまり、テナーの異なるLiborを交換するベーシススワップの片方に乗るスプレッドである。
例えば、Libor3MとLibor6Mを交換する3-6ベーシススワップの3Mサイドに乗るのがテナーベーシス(3-6ベーシス)である。Libor3MとLibor6Mは最近で言うところのフォワードルッキングなターム物レートであり、付利期間の初めにレートが決定するが、そのレートが参照している期間は付利期間と同じである。すなわち、レートが決定される時点から見て将来の期間に対応する金利、になっている。
Libor廃止後はRFRのターム物に切り替わるのだが、ターム物には大きく分けてバックワードルッキングなターム物とフォワードルッキングなターム物の2種類がある。今のところ、デリバティブについてはバックワードルッキングなターム物に切り替わる予定である。一方、ローンなどのキャッシュ商品はフォワードルッキングなターム物に切り替わるかもしれない。
ターム物はその参照期間に応じて複数のレートができてくる。3Mのターム物、6Mのターム物、という感じである。例えばドルであればRFRはSOFRだが、そのターム物として、SOFR3MやSOFR6Mなどと呼ばれるものが出てくるだろう。ターム物RFRは、短期のスワップや先物から計算されるレートであるが、市場では、既に計算済みのレートが公表されるだろう。つまりターム物RFRの形で直接、市場から取得(市場で観測)できるだろう。
ドルのベーステナーは3Mであるから、スワップの変動金利は3Mのターム物、つまりSOFR3Mがメジャーになるだろう。そうすると、マーケットでクォートされるドルのスワップレートは、SOFR3Mと固定金利を交換するスワップに関するものである。
加えて、変動金利どうしを交換するスワップ、というのも昔からあるわけなので、SOFR3MとSOFR6Mを交換するスワップ、というのも出てくるかもしれない。これは現在のLibor3MとLibor6Mを交換するスワップに対応するものである。普通に考えれば、このようにテナーだけが異なる金利インデックスを交換するスワップは、どちらのサイドにもベーシスが乗らないはずである。しかしながら、実際の市場では、Libor3Mのサイドにベーシスが乗った形でクォートが行われている。そう考えると、SOFR3M + ベーシス と、SOFR6M を交換する、というように、ターム物RFRにもテナーベーシスがクォートされるかもしれない。これがOISインデックスのテナーベーシスである。
このようなOISインデックスのテナーベーシスについては、将来的に出てくる可能性があるが、現在はそもそも、ターム物RFR自体を開発し、普及させているところである。したがって、テナーの異なるターム物RFRを交換するスワップがすぐには出てこないかもしれない。しかし、Liborのテナーベーシスが普通に市場で観測されていることを考えると、ターム物RFRを参照するスワップが普及するころには、ターム物RFRのテナーベーシスが出てくるかもしれない。
参考文献
スワップ取引のすべて(第5版) 実践デリバティブ: Excelでデータ分析 Interest Rate Swaps and Their Derivatives: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance Book 510) (English Edition) Interest Rate Derivatives Explained: Volume 1: Products and Markets (Financial Engineering Explained) (English Edition)こちらもおすすめ
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