メガバンクの会計上CVA導入はいつなのか

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解説

日本のメガバンクがCVAをそろそろ導入するとの記事がRiskに出ている。
記事では、次の期末(2019年3月末)決算から導入するとのことだが、これは正しくないだろう。
どのメガバンクもいまだ導入の準備をしている段階であるため、
実際に決算で入れるのは次の年度(2020年3月期末)以降となるだろう。

メガバンクの中でも、CVAの導入準備について進捗はバラバラで、
既に何年も前から銀行全体のCVAを四半期ごとに計算しており、あとは実際に決算で発表するだけ、というところもあれば、
別の銀行では、主要な商品について計算エンジンの開発が完了しているものの、
定期的に計算するためのデータハンドリングの整理や、特に社内調整が遅く、まだ導入には時間がかかりそうなところもあるし、
また別の銀行では、計算エンジンの開発自体に苦戦しており、まだ簡便的な方法でしか計算できていないところもあるようだ。

CDSがないカウンターパーティについては内部格付けからのマッピングでいったん対応しようとしている銀行もあるようだ。
これについては、フロントでのプライシング、規制、会計のいずれでも、
もはやマーケットインプライドのデフォルト確率を用いるのが標準的になっているため、
内部格付けからのマッピングについては、規制当局や監査法人への説明が難航する可能性もある。

記事では、邦銀はいまだに対顧客で無担保のデリバティブを多数抱えていることから、
CVAを導入すると、多額の損失を計上することになるだろうと述べられている。

CVAによる多額の損失というと、Standard Charteredの例が記憶に新しいが、これは、CVAの計算方式を、
内部格付けベースのデフォルト確率から、マーケットインプライドベースのデフォルト確率に変更したことによるものだ。
内部格付けベースだとヒストリカルのデフォルト実績から求めるが、
CDSなどマーケットインプライドなものだと、それよりもデフォルト確率がかなり高めに出るため、
大きな損失計上につながった。

CVA損失がどれくらい大きくなるかについては、
・無担保取引がどれくらい多く残っているか
・デフォルト確率をどう計算するか
以外にも、
・LGDをどう計算するか(ヒストリカルかインプライドか)
・取引の年限がどれくらい長期であるか
・CVAのヘッジ取引をどれくらいやっているか
なども影響してくる。

インプットデータにヒストリカルを使うかインプライドを使うかについては、
インプライドを使うことにより、規制上のCVAを低く抑えることで、資本コストを節約するインセンティブが銀行にはある。
確かに、インプライドを使う方がCVAは大きくなるのだが、
FRTBの標準的手法におけるCVA(SA-CVA)では、インプライドなインプットから計算しなくてはならないため、
ヒストリカルを用いていると、そもそも標準的手法を使わせてもらえないかもしれないからである。
その場合、基礎的手法を使うことになるので、CVAが何倍にも跳ね上がる可能性がある。
基礎的手法を使わされるくらいであれば、初めからおとなしくインプライドなインプットを用いた方がましだ、
というわけである。

メガバンクのCVA導入による損失額については、正確に総額を把握するのが難しいかもしれない。
なぜなら、CVA導入にあたっては、バニラ商品から順番に何回かの決算に分けて、CVAを段階的に導入するケースが多いからである。
その場合には、毎回のCVA導入による影響額を合計しないと、全体的なCVA損失はわからない。
また、損益の悪化分について、そのうちCVAによる影響分だけを抜き出して金額を公表する、ということが行われない可能性も高い。
この場合、実際のCVA損失額が、その他の損失の中に埋もれてわからない、ということになる。

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