CDSのパースプレッド、ディールスプレッド、アップフロントフィー

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CDSは、

 

・固定クーポンを支払う、プレミアムLeg
 
・参照企業がデフォルトしたら一定額をまとめて支払う、プロテクションLeg
 
の2つから成っている。
 
このプレミアムLegについて、実際のCDS契約で支払われる固定クーポンレートは、教科書で出てくるCDSスプレッドとは異なる。
 
教科書で出てくるCDSスプレッドは、いわゆるパースプレッドであり、これは市場実勢でCDSの時価がゼロになるようなスプレッドである。
つまり、プロテクションLegの市場実勢に一致するように、プレミアムLegを定めた場合の、固定クーポンレートである。
 
一方で、実際のCDS契約で支払われる固定クーポンレートは、Deal Spreadとか、Fixed Spreadとか、Contractual Spreadといわれるものである。
ややこしいことに、このディールスプレッドは、教科書で出てくるパースプレッドとは全くの別物である。
 
ディールスプレッドは、参照企業のクレジットのレベルに応じて、その水準が決まっており、
たいていは100bpsか500bpsである。たまに25bpsや1000bpsの銘柄もあるようだ。
このように、ディールスプレッドはかなり標準化されており、ほとんどの銘柄が100bpsか500bpsである。
水準の異なるスプレッドが参照企業の数だけある、というわけではない。
 
パースプレッドは取引開始時の時価がゼロになるような固定クーポンである。
ディールスプレッドは、パースプレッドとは異なる値で決まっている。
ということは、ディールスプレッドをクーポンレートとして約定すると、時価はゼロにはならない。
 
では、このディールスプレッドとパースプレッドの差によって生じる時価は、どうやって帳尻を合わせるのだろうか。
そこで登場するのがアップフロントフィーや、アップフロントプレミアム、アップフロントペイメントなどと呼ばれるものである。
 
例えば、マーケットでクォートされているパースプレッドが150bpsで、ディールスプレッドが100bpsと設定されているCDSの場合を考える。
 
市場実勢だと150なのに、契約上は100なので、スプレッドを支払う側は、かなりスプレッド支払いを節約できてしまう。
一方、スプレッドを受け取る側から見ると、本当は150もらわないとアンフェアなのに、実際は100しかもらえないことになる。
 
これではアンフェアなので、CDS契約を開始する際に、差額をアップフロントフィーとして受け払いすることで、帳尻を合わせる。
 
アップフロントフィーは、差分の50bpsにリスキーアニュイテイをかけて求める。
リスキーアニュイテイとは、時点ごとにディスカウントファクター、付利期間、累積生存確率をかけて合計したものだ。
したがってアップフロントフィーは、
150bpsの場合のプレミアムLegの時価と、
100bpsの場合のプレミアムLegの時価との差額である。
 
これを取引開始時に受け払いすることで、フェアな状態から取引をスタートするのである。
 

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