ざっくり解説
クーポンがCMSスプレッドに依存して決まる仕組債である。
CMSスプレッドとは満期の異なるスワップレートの差分であり、例えば
(満期20年のスワップレート)-(満期2年のスワップレート)
である。
CMSスプレッド債は、イールドカーブの傾きがきつくなれば大きなクーポンを受け取れる。つまり長短金利差が拡大することにベットする商品である。
CMSスプレッドクーポンには、上限と下限が設定されることが多い。このためクーポンにはCMSスプレッドに対するオプションが組み込まれることになる。
さらに、CMSスプレッド債の全体に早期償還条項(マルチコーラブル条項)が付いていることが多い。その場合、契約で定められた行使可能日の中から、発行体にとって都合の良いタイミングで早期償還できる。すると、投資家は満期より早く額面金額の返済を受けることになる。
CMSスプレッド債の通貨はJPYよりもUSDでよく見かける。
CMSスプレッドクーポン
CMSスプレッドクーポンは例えば以下のような形をしている。
\(0.0\% \leq \mathrm{CMS20Y} – \mathrm{CMS2Y} + 0.05\% \leq 2.0\%\)
CMSスプレッドにいくらかのマージンが乗せられ、クーポンとして支払われる。ただしゼロフロアとキャップが付いている。
CMSスプレッドクーポンを一般的な形で書くと、
\(F \leq a_1 S_{T}( T_1 ) – a_2 S_{T}( T_2 ) + b \leq C\)
となる。\(T\) はクーポンの確定時点、\(S_{t}(T_1 ), S_{t}(T_2 )\) はスワップ満期の異なる2つのCMSである。\(a_1 , a_2\) はレバレッジ、\(b\) はマージン、\(F\) はフロア、\(C\) はキャップである。
逆イールド
CMSスプレッドクーポンは、マーケットが順イールドであることを前提に作られた。すなわち、スワップレートは満期の長い方が短い方よりも高いレートになる、\(\mathrm{CMS20Y} – \mathrm{CMS2Y}\) がプラスになることが前提になっている。
しかしUSDで一時期、問題になったように、逆イールドになると、CMSスプレッドがマイナスになってしまう。この場合、ゼロフロアが付いているのでマイナスクーポンにはならない。つまり投資家が発行体にクーポンを支払う、という事態にはならない。しかし逆イールドの状態が続くと、ゼロクーポンが続いてしまうことになる。
たいていCMSスプレッドにマージンを乗せたものがクーポンなので、このマージンの分だけCMSスプレッドがマイナスに行ってもプラスのクーポンがもらえる。しかしいずれにせよCMSスプレッドがワイドニングしない限り(スプレッドが広がらない限り)、高いクーポンがもらえることはない。
レンジアクルーアル債と逆イールド | Quant College
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