スマイルと期間構造は別問題

金利スマイルのモデリングと、金利の期間構造のモデリングが頭の中でごちゃごちゃになっている人が多い。

金利スマイルモデルは、特定の期間を参照する金利について、その確率分布を精緻に表現するために用いる。
一方、金利の期間構造モデルは、期間の異なる金利間の相関を表現するために用いる。
つまり、スマイルは単一の原資産しかモデリングしないが、期間構造モデルは、多数の原資産の相関をモデリングしていることになるので、全く異なる。
 
・スマイルモデルは、単一の原資産の分布を表現する
・期間構造モデルは、多数の原資産の相関を表現する
 
と覚えよう。
 
期間構造モデルと相関については、まず、株価や為替とほ異なる金利の特徴を押さえる必要がある。
金利は同じ金利指標であっても、期間が違えば異なる原資産である。
同じ円ライボー6ヶ月のイールドカーブを参照していても、1年金利、5年金利、10年金利など、これらは全部異なる金利である。実際、1年スワップレート、5年スワップレート、10年スワップレートは、それぞれ異なる値がクォートされており、変動の仕方も少しずつ異なっている。
これら期間の異なる金利はそれぞれが異なる原資産なので、大量にある金利を統一的にモデリングしないといけない。そのために必要となるのが金利の期間構造モデルである。
 
金利が期間によって異なるのだが、よりわかりやすい考え方としては、同じ通貨、同じ金利インデックスの割引債価格を見てみるのがよい。
割引債価格、つまりディスカウントファクターは、満期によって異なる値になっている。時点が変われば、イールドカーブ全体が動くので、あらゆる満期のディスカウントファクターが全て動く。そしてこれらは全てが全く同じ動き方をするわけではない。
このように、大量にある、満期が異なる割引債価格を、統一的にモデリングするのが期間構造モデルである。言い換えると、イールドカーブ全体をモデリングしているのである。
 
金利の期間構造モデルは、多資産を同時に表現する、多資産モデルと考えるのが正しい。ここで多資産というのは、満期の異なる割引債価格を全て別々の資産として見ることを意味している。
株価であれば、日経平均とS&P、というように異なるインデックスを参照しない限り、多資産モデルは必要ないが、金利の場合には、円ライボー6ヶ月しか参照しない商品であっても、特にコーラブルなどのエキゾチック商品の場合は、多資産モデルが必要になる。この多資産モデルが、金利の期間構造モデルである。

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