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デリバティブの公正価値は出口価格である。
デリバティブの出口価格は、そのデリバティブをノベーションにより他の金融機関に譲渡したときに受け払いする金額だ。
価格がプラスならノベーション先から受け取るし、
価格がマイナスならノベーション先に支払う。
デリバティブのノベーションとは
デリバティブのノベーションとは譲渡のことであり、
会社A vs 銀行B
で取引していたものが、
会社A vs 銀行C
と変わるわけである。
つまり銀行Bから銀行Cにデリバティブが譲渡される。
ここで、銀行Bや銀行Cに対応するのはメガバンクか外資系を含む大手証券会社くらいだろう。マーケットメイクを行なっているような、いわゆるデリバティブ業社である。
ここで、銀行Bにとってこのデリバティブの公正価値は、仮に銀行Cなどのデリバティブ業社に譲渡したとすると、いくら受け払いすることになるか、を見積もった金額である。
この受け払い金額を計算する主体は、基本的に銀行Cである。銀行Cに当たるデリバティブ業社が、将来そのデリバティブで受け払いするキャッシュフローを見積もって割り引いたNPVを提示してくるが、これがいくらぐらいになるかを銀行Bが見積もって、それを公正価値とする。
つまり、銀行Bが主体的に考えて計算するものというよりは、他社がどのように計算してくるかを想像して、それに合わせた計算をする、というのが本来適切なスタンスなのである。
ここで、金利スワップであれば、将来受け払いする変動金利をフォワードレートで見積もって求めた利息金額を、割り引いたものが公正価値になる。この変動金利の見積もり額は、将来受け取るのであればプラスで公正価値に計上するし、将来支払うのであれば、マイナスで計上する。これは、金利の見積もり額を前もって計上するというよりは、あくまで時価の一部として計算に入れるものである。
公正価値は、あくまで仮にノベーションしたらいくら受け払いするか、を見積もったものに過ぎない。もしもの話なのである。
ここで、実際にはノベーションすることなく、この金利スワップを続けることがほとんどであろう。すると、将来キャッシュフローを決める変動金利がフィキシング日を迎えて、利息の実額が定まっていくことになる。ここで、実際に発生する利息金額は、事前に公正価値の中でフォワードレートにより見積もった金額とは異なるものになるだろう。しかしながら、受け取るならプラスで、支払うならマイナスで計上されることになる。
この変動金利の受け取りで発生したプラスの実額と、それより以前に公正価値を見積もる際にプラスで計上した変動金利の見積もり額は、二重計上で問題なのかというと、これはそうではないだろう。というか実際にみんなそうやって計上しているのである。
前者は銀行Bに実際に発生したキャッシュフローだが、これは、仮に銀行Bが本当にノベーションしていたら発生しないキャッシュフローである。
後者の公正価値の方は、銀行Bがもし仮にその金利スワップを銀行Cに譲渡したら、いくら受け払いするか、を見積もったものに過ぎない。目線は銀行B自身ではなく相手の銀行Cである。
このあたりの話は、変動金利の実額と、デリバティブ公正価値とが、実際にはそれぞれどういう勘定科目にどのように集計されるか、という会計の話になるため、正確には会計士に聞くしかない。
しかしながら、おそらく実額の方は受取利息や支払利息、というような勘定科目に計上され、公正価値の方は金利スワップや、デリバティブ資産あるいはデリバティブ負債、というような勘定科目に計上されるのだろう。