バリアンススワップはデルタヘッジをすることなくボラティリティを直接トレードする商品であり、エクイティでは一般的なプロダクトになっている。
買い手から見ると満期のペイオフは以下の通り。
$$100^2 \left( \sigma_{real}^2 – K_{var}^2 \right)$$
ここで、\( \sigma_{real} \)は年率に変換したリアライズドボラティリティ、\( K_{var} \)はストライクである。100^2をかけているのは、例えばボラティリティが25%であれば0.25であり、これが2乗されるわけなので、%の2乗をスケール変換するために、100^2がかけられている。リアライズドボラティリティは以下のように計算する。
$$\sigma_{real}^2 = \frac{252}{N} \sum_{i=0}^{N-1} \log ^2 \frac{S_{i+1}}{S_i}$$
分散の計算において平均はゼロと仮定されている。また、252をかけることで年率換算しているが、これはつまり1年の営業日数を252日と仮定している、ということである。金利であれば休日も金利が発生し、休日の日数も込みで利払金額が決まることから、1年は360日や365日で年率換算するが、エクイティでは休日に株価が動かないことから、252日で年率換算することになる。
ボラティリティを横軸にとると、ボラティリティが2乗されているので、ペイオフはConvexになる。つまり、Deep ITMに行くほど傾きが急になっていく一方で、Deep OTMに行くと傾きは緩やかになっていく。
このバリアンススワップをプライシングするには、上記のペイオフの期待値を考える必要がある。ここで、短い区間における株価の分散を、満期まで積み上げていったものの期待値を考える:
$$\mathbb{E}\left[ \int_0^T \sigma_t^2 dt \right]$$
ここで、\( \sigma_t \)は株価の瞬間的なボラティリティであり、Black-Scholesモデルのように確定的ではなく、確率的に動くものとする。具体的には、株価がリスク中立測度のもとで以下のダイナミクスに従うと仮定する。
$$\frac{dS_t}{S_t} = \nu_t dt + \sigma_t dW_t$$
まず、伊藤の公式を使うと、
$$\log{S_T} = \log{S_0} + \int_0^T \frac{1}{S_t}dS_t – \frac{1}{2}\int_0^T \frac{1}{S_t^2}(dS_t)^2$$
$$= \log{S_0} + \int_0^T \frac{1}{S_t}dS_t – \frac{1}{2}\int_0^T \sigma_t^2 dt$$
となるが、最後に出てきたトータルバリアンスの項について解くと、
$$\int_0^T \sigma_t^2 dt = 2\int_0^T \frac{1}{S_t}dS_t -2\log{\frac{S_T}{S_0}}$$
を得る。ここで右辺第1項に注目すると、株価のダイナミクスから、
$$\mathbb{E} \left[ \int_0^T \frac{1}{S_t} dS_t \right] = \int_0^T \nu_t dt = \log{\frac{F}{S_0}}$$
がわかる。ここで、\(F\)はフォワードであり、
$$F = S_0 \exp{ \left( \int_0^T \nu_t dt \right) }$$
である。以上から、
$$\mathbb{E}\left[ \int_0^T \sigma_t^2 dt \right] = \mathbb{E}\left[ 2 \log{\frac{F}{S_0}} \right] – \mathbb{E}\left[ 2\log{\frac{S_T}{S_0}} \right] \\ = \mathbb{E}\left[ -2\log{\frac{S_T}{F}} \right]$$
を得る。このことから、トータルバリアンスの期待値を求めるには、株価の対数に依存するペイオフの期待値を求めればよいことがわかる。実際には、このようなペイオフを持つ商品は市場にないのだが、原資産のスマイル全体がわかっていれば、満期の原資産価格のみに依存する任意のペイオフは、コールとプットのポートフォリオで複製することでプライシングできる。これをレプリケーション法と呼ぶが、エクイティではバリアンススワップ、金利ではCMSの評価に用いられている。