一物一価とFVA不要論

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解説

FVAを入れると一物一価にならないから、入れることには疑問があるとのコメントを頂いた。これは2012年ごろにアカデミック界からの問題提起で一時的に盛り上がった、FVA不要論そのものである。

2012年のHull-White論文が問題提起したものだが、彼らの主張は要するに、一物一価が成り立たないのでFVAを価格に入れるべきではない、というようなものだった。彼らの議論では多くの仮定を置いており、理想的な状況では成り立つのかもしれないが、実務界からかなりの反論を受けることとなった。最終的にはアカデミック界の主張を実務界が聞き入れることなく、何事もなかったかのようにFVAを価格に織り込み続け、市場慣行として定着してしまった。FVA不要論については実務界では既に決着済みだが、今度改めて記事にしたい。
 
一物一価が成り立たなくなったのはさかのぼることリーマンショック前ごろだろう。通貨ベーシスが拡大したまま放置されていたからである。現在のデリバティブ市場において一物一価が成り立っていないことを示す例は多く、例えば次のようなものがある。
 
・通貨ベーシス
・担保通貨に応じてディスカウントカーブを選択する市場慣行
・CCPベーシス
・自己のクレジットスプレッドで求めるDVA
・自己のファンディングスプレッドで求めるFVA
・自己のファンディングスプレッドで求めるMVA
 
また、CVAについても、CDSがない先のプロキシースプレッドの求め方は決まった方法があるわけではない。もっとも、某情報ベンダーの販売するプロキシースプレッドを用いているケースが多いように感じるが。
さらに、そもそもエキゾチックデリバティブも一般的なプライシングモデルというのが1つに定まっているものではなく、モデルによってかなり異なるプライスになる。
加えて、バニラオプションにおいても、スマイルの補間補外モデルは各社別々のものが用いられているので、会社によって異なるプライスとなっている。
一物一価はかなり理想的な状況を表しているが、残念ながらそれが成り立っていないケースの方が多い。
また、会計士も、一物一価を守りなさい、と言っているというよりはむしろ、市場慣行にしたがってきちんと出口価格と整合的なプライスを出しなさい、と言っている場合が多い。

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