クオンツに必要なスキル・素養は?

学生向けシリーズ。クオンツ業務に必要なスキル・素養としては、以下のようなものがある。

・確率統計などの数学
・プログラミングなどのIT
・金融市場に対する関心
・クオンツ以外の人に目線を合わせて要点を説明する能力

数学とITについては、基礎的な内容を習得するのにある程度時間がかかる。しかし数学とITを比べると、数学の方が積み上げの学習にかかる時間は長い。このため、数学の基礎を知らない候補者と、ITの基礎を知らない候補者がいた場合、数学の基礎を知らない候補者の方が、入社後に大変苦労することになる。そういうわけで、書類の段階で理系院卒に絞っていれば問題ないとは思うが、例えば学部一年生の解析と線形が身に付いていなさそうな応募者は、採用されることはないと思っていいだろう。

プログラミングなどのITスキルについては、入社後に習得していくことが十分可能である。重要なのは、数学の基礎をきちんと習得できた人であれば、プログラミングの習得はそれほど難しくはないだろう、ということである。これら2つのスキルで共通しているのは、「物事を抽象的に考える力」であり、数学を習得できた人であればこの点については問題ないだろう。あとは自分で調べながら手を動かす経験を積めば身に着けられるので、プログラミングについては特段心配する必要はないと思われる。

金融市場に対する関心は、それが全くありませんという応募者は少ないはずだが、中には、数学に強い興味はあるが金融にはそれほど興味がない、という人もけっこういる印象だ。これは新卒採用の場合に多いだろう。業務内容としては金融市場に関連するものがほぼ全てであるから、それに関心がない人はクオンツとしてのキャリアが長続きしないだろう。

金融市場に対する関心は、最悪、それほどなくても業務は遂行できるかもしれないが、クオンツ以外の人に説明する能力、というのは必須であり、それができない人は厳しい。比較的ジュニアのポジションであっても、トレーダー、ストラクチャリング、リスクマネジメントなど、クオンツではない人たちに説明する場面はけっこうあるので、技術的な内容を直感的に説明できることは非常に重要である。これについては、今まであまり重要視せず、練習を怠ってきた学生はけっこう多いため、容易に周囲との差別化を図れるだろう。

上記に加えて、さらに基礎的な素養としては、

・新しい技術に対する関心
・出くわした問題について自分で調べて自分で解決する自走能力
・論理的でかつ誤解されにくい文書の作成能力

なども重要である。しかしこれらの素養が必要というのは、クオンツに限った話ではないが、順番に軽く見ていく。

最近では、機械学習などのデータサイエンスの技術がデリバティブプライシングにも応用され始めている。まだ教科書のような形で体系化されていない内容を、自分で論文を読んでキャッチアップしていく、ということが必要になるため、新しい技術に対する関心というのも重要である。

自走能力については、ITエンジニアでもよく言われることだが、最近ではネットに有益な情報が無料で転がっているので、プログラミングの習得には、自分でググって調べるのが当たり前になっている。このような自走能力がある人は、周囲のクオンツの時間を奪うことなく、自力でどんどん進歩していけるので、チームとしては教育コストが低く済み、非常にありがたいのである。

最後に、文書作成能力だが、これは大企業で働くのであれば必ず必要となる素養であり、クオンツにおいても例外ではない。クオンツのようなポストがあるのはほとんどが大企業ということもあり、自分のやった仕事を最終的にはドキュメントに落とし込む必要がある。クオンツ業務自体をきちんとこなしていたとしても、最後に作成されたドキュメントがイマイチだと、どうしても印象が悪くなるのでもったいない。

採用する側としては、以上の素養が有りそうかどうかについて、書類と面接で判断していくことになる。今後の記事では、新卒採用と中途採用に分けて書いていくことにする。