無担保取引評価: ファンディングの仮定

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解説

無担保デリバティブの評価においては、グローバルな市場慣行は、

(OISディスカウントによる基準価値)+(xVA)

であるが、一部の日本の金融機関においては、xVAを考慮できるだけの技術力がないため、より簡便的な評価が行われている。その一つとしては、以下のように、xVAを別枠で計算せず、基準価値に含めてしまうものである。

(ファンディングレートでディスカウントした基準価値)

ここで、ファンディングレートは無担保での資金調達における借入金利であり、会社によって異なるレートが設定される。このような評価を行う理論的な基礎となっているのは、有名な論文、Piterbarg (2010)であり、そこでは、デフォルトを考慮しない場合に無担保取引の評価は、ファンディングレートでディスカウントしたものになる、と主張されている(もっとも、現在ではデフォルト以外にも様々な要因を追加的に考慮した評価式が導出されているが)。

このような方法は、デフォルトを考慮せず、ファンディングのみを考慮するものであり、xVAのうち、FVAのみ(より正確にはFCAのみ)を加味している。つまり、CVAは無視してFVAのみを考慮し、それを別枠では計算せずに、FVA込みの評価を直接計算している

上記のように、ファンディングレートでディスカウントする方法を用いる場合、(無担保)ファンディングレートをどのように設定するか、というのが実務的な問題として残る。多く見かけるのは、

円LIBOR6M+ファンディングスプレッド(bps)

というものであり、足元では円の資金需給が逼迫していないことから、ファンディングスプレッド=0としている会社も多い。その場合、単なるLIBORディスカウンティングで評価していることになる。

ファンディングレートの設定の仕方は業態によって異なり、

証券会社の場合には、LIBORなど市場ベースの金利を目線に考える一方で、

商業銀行の場合、ほとんどのファンディングはコア預金でまかなえているとして、預金金利を目線に考えることが多い。

よって商業銀行では、預金金利がほぼゼロであるから、上記のようなLIBORディスカウンティングでもファンディングレートが高すぎると考え、無担保取引もOISディスカウンティングでいいのではないか、といった意見も出るようである。

自社のファンディングレートは当然、会社によって異なるため、xVAを考慮している外資系金融機関においても同様に、FVAを計算するのに用いる、対LIBORのファンディングスプレッドは、会社ごとに違う値が用いられている。さらに、ファンディング通貨が異なるため、米系銀行であればUSD LIBOR3M基準でスプレッドを設定するが、欧州系銀行であればEURIBOR6M基準で設定する、ということも考えられる。

このように、同じキャッシュフローを生む商品であっても、会社によって異なるファンディングレートが適用される結果、評価額が異なるというのは、フロント部署における経済的価値の評価としては正しい一方で、会計上の公正価値としては、出口価格や一物一価という伝統的な概念に反する。この問題については、また別の機会に取り上げる。

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