マルチカーブにおける金利モデルのキャリブレーション

以前にも書いた通り、マルチカーブにおける金利パス生成では、あらゆるベーシスが全て確定的と仮定する。

 
通貨ごとに1つのカーブのみをシミュレーションして、それ以外のカーブは、基準日において観測できるベーシスを足すことにより生成する。
 
よくあるのは、OISカーブに対応するショートレートのみをシミュレーションして、Liborカーブは基準日のベーシスを足すことで生成する、というものだ。
この場合に、注意しないといけないのは、金利モデルのキャリブレーション対象である。
 
金利モデルはあくまでOISカーブに適用されているため、一義的には、OISレートのマーケットボラティリティにキャリブレーションしないといけない。ところが、今のところ、OISスワップションのボラティリティは取得できないため、Liborスワップションのボラティリティしか使えない。
 
金利モデルとしてよく用いられるハルホワイトモデルについて、そのもとでのLiborスワップション価格式は、よく教科書に載っているのはシングルカーブ前提のものである。
 
このシングルカーブ前提の価格式を、LiborカーブをOISカーブに読み替えて、数式を変形することなく用いてしまうと、これはOISスワップション価格を求めていることになる。すると、OISスワップションのモデル価格をLiborスワップションのマーケット価格に合わせることになってしまう。これは誤りである。
 
そのため、Libor-OISベーシスが確定的と仮定したマルチカーブ前提における、ハルホワイトモデルのLiborスワップション価格式を用いないといけない。これは例えばAndrew GreenのXVA本にも載っているし、マルチカーブ前提で改定された中村さんのハルホワイトモデル本にも載っている。
 
 

—–